月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
J2・18位の甲府が天皇杯V、猪木の壮絶人生、原vs岡田のドラフト対決、雪辱のオリックス…10月のスポーツ界を表す“ある言葉”とは?
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byJIJI PRESS
posted2022/11/02 06:01
J1相手に天皇杯初優勝を果たしたJ2で18位のヴァンフォーレ甲府。その下克上を祝い、10月29日には山梨県甲府市で祝勝パレードが行われた
甲府の最高顧問の海野一幸氏曰く、大企業がない地方でプロは無理というあきらめの雰囲気の時期もあったというのだが、
《転機があった。小児科医の長女・杏奈さんの患者にファンがいて「サインがほしい」と頼まれた。せっかくだからと選手を連れ慰問すると、殊の外喜ばれた。「これだ」。選手とふれ合った人が会場を訪れてサポーターになり、活動を知った企業がスポンサーになる。負のスパイラルが反転した。「プロが地域にある意義を示すことが大事だった」》(報知10月17日)
今回の下剋上は「地方クラブに勇気」でもあった。
アントニオ猪木の下剋上人生
今年は著名人やスターの訃報が続く。10月1日にはアントニオ猪木死去の報。猪木の人生もある意味「下剋上」ではなかったか? 対ジャイアント馬場、対世間というチャレンジ。猪木を見続けているとコンプレックスとの闘いだったとも思う。そこから怒りやエネルギーが湧く。
東スポの訃報当日の見出しは『プロレスのために世間の目と闘い続けた62年』。
ああ、こういうときはやっぱり東スポだ。ビシッと決めた。しかし2、3日経つと見出しは『猪木 魔性の借金』。通常営業に戻っていた東スポ。
猪木の弟子の言葉で印象的だったのは藤原喜明。
「一番教わったこと? 何だろうな…やっぱり『プロレスは闘いである』、『客に媚びを売るな』。この言葉だな。猪木イズムってこれだと思うよ」(スポーツ報知WEB10月22日)
これからも語られることが続く猪木。100人いれば100人の猪木観がある、「モノの見方」の定規みたいな人だったとも思う。
そうそう、下剋上といえば平穏に終わりそうだったプロ野球ドラフト会議も一瞬そんな匂いが。
注目を浴びたのが高松商(香川)の浅野翔吾外野手を競合した巨人と阪神。くじ引きは巨人・原辰徳監督が過去1勝11敗、阪神・岡田彰布監督は過去1勝7敗。つまり、どっちが当たっても「下剋上」!?
当たりを引き当てたのは原監督だったが、抽選前のあの不安そうな顔は現役時代の「チャンスを前に不安げなタツノリ」を久しぶりに見た。懐かしかった人も多かったはずです。