月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
J2・18位の甲府が天皇杯V、猪木の壮絶人生、原vs岡田のドラフト対決、雪辱のオリックス…10月のスポーツ界を表す“ある言葉”とは?
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byJIJI PRESS
posted2022/11/02 06:01
J1相手に天皇杯初優勝を果たしたJ2で18位のヴァンフォーレ甲府。その下克上を祝い、10月29日には山梨県甲府市で祝勝パレードが行われた
さて今月の大一番はプロ野球日本シリーズ。2年連続日本一に挑む高津ヤクルトvs.26年ぶりの日本一を目指す中嶋オリックス。
両者ともに史上初となる「2年連続最下位からの連覇」。これだけでもう最大の下剋上案件です。
引き分けも含んだ素晴らしい試合が続き、第6戦前にはこんな一面記事も。
『さぁ日本初シリーズ第9戦!!5戦で4試合2点差以内 史上最高!!史上最長の激闘 現実味』(スポーツ報知10月29日)
1986年以来の第8戦どころか、第9戦も現実味を帯びてきて関係者は本格的な準備に入ったというのだ。
結果は第7戦で終了し、オリックスが2敗1分けから4連勝で日本一に輝いた。
中嶋采配を支えた鉄壁の救援陣
「調子のよい選手をどんどん使って、全員で勝つという、それをただシンプルにやっただけだと思います」(オリックス・中嶋聡監督優勝インタビュー)
《”ナカジマジック”と称されるが、思いつきの策ではない。確かな根拠、データに基づき起用してきた。万が一に備え、最悪の事態も想定する。このシリーズでも主力の離脱や不調があっても、どっしりと構えた。》(東京中日スポーツ10月31日)
《投手陣が奪った71三振はシリーズ最多記録。継投がさえた。》(スポニチ10月31日)
『宇田川 陰のMVP』という記事も。
《4試合に登板し、計5回2/3を無失点。1勝2ホールド、10奪三振の活躍で、得点機を何度も断った。(略)支配下登録された7月下旬からわずか3カ月で、誰も予想できなかったサクセスストーリー。》(スポニチ同)
育成から這い上がった宇田川投手だけではない鉄壁の中継ぎ陣は、あらためて野球の面白さを見せてくれた。それはヤクルトの選手たちも同様だ。
ここまで「下剋上」をキーワードとして見てきましたが、日本シリーズは紛れもなく王者同士の見事な名勝負だった。
以上、10月のスポーツ新聞時評でした。