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大谷翔平の2022二刀流成績詳細「サイ・ヤング賞級の奪三振率+破天荒なW規定」は例年なら文句なしMVPも「ジャッジとの争い」では… 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2022/10/12 06:00

大谷翔平の2022二刀流成績詳細「サイ・ヤング賞級の奪三振率+破天荒なW規定」は例年なら文句なしMVPも「ジャッジとの争い」では…<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

投打両面で一流の成績を残した大谷翔平。ジャッジとの“MVP論争”も起きたシーズンだった

 1883年には現サンフランシスコ・ジャイアンツの殿堂入り選手のジョン・ウォードが打率.255(380打数)でナ・リーグ69位に、防御率2.70(277回)で14位にランクされている。いずれにしても大谷の記録は、19世紀の「神代の時代」以来の記録だと言えよう。

 ちなみに日本プロ野球では、NPBでは同一シーズンに防御率と打率のランキングにランクインした事例は、30例ある。1937年春シーズンにはタイガースの景浦将が打っては47打点で打点王、打率.289で4位、投げては11勝5敗、防御率0.93で2位になっている。これが日本の「二刀流」としては最高記録だろう。2リーグ分立後は、1950年に阪急の野口二郎が打率.259で30位、防御率3.16で6位になったのが唯一の例だ。

 大谷翔平はNPB時代には2014年に防御率2.61(3位)、2015年に2.24(1位)と2度規定投球回数に到達したが、打者としては2016年の382打席が最多で、規定打席(443)に到達したことはなかった。

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 これを見ても、今年の大谷の「ダブル規定入り」は破天荒の記録だと言える。

気になるのはMVPの行方…「WAR」で見ると?

 さて、気になるのが――MVPの行方である。

 WAR(Wins Above Replacement)は投打守のほぼすべての記録を組み合わせて数値化した総合指標だ。投手も野手も同列で比較できるのが最大の特徴であり、MVPやサイ・ヤング賞の最重要の判断基準になっている。『FanGraphs』と『Baseball Reference』という2つの記録専門サイトから発表されていて、それぞれfWAR、 rWARと称されている。

 まずは投手のア・リーグWAR5傑から。

 <fWAR>
 1 J.バーランダー(アストロズ)6.1 /28登18勝4敗175回185振 率1.75
 2 K.ガウスマン(ブルージェイズ)5.7 /31登12勝10敗174.2回205振 率3.35
 3 大谷翔平(エンゼルス)5.6 /28登15勝9敗166回219振 率2.33
 4 S.ビーバー(ガーディアンズ)4.9 /31登13勝8敗200回198振 率2.88
 5 D.シース(ホワイトソックス)4.4 /32登14勝8敗184回227振 率2.20

 <rWAR>
 1 D.シース(ホワイトソックス)6.4 /32登14勝8敗184回227振 率2.20
 2 大谷翔平(エンゼルス)6.1 /28登15勝9敗166回219振 率2.33
 3 J.バーランダー(アストロズ)5.9 /28登18勝4敗175回185振 率1.75
 4 A.マノーア(ブルージェイズ)5.9 /31登16勝7敗196.2回180振 率2.24
 5 M.ペレス(レンジャーズ)5.0 /32登12勝8敗196.1回169振 率2.89

 fWARでは39歳の大投手、アストロズのジャスティン・バーランダー、rWARではホワイトソックス、デュラン・シースが1位だが、大谷はfWARでは3位、rWARでは2位につけている。WARは積み上げ型の数字で、出場が多い選手が有利だ。規定投球回ぎりぎりの大谷は不利だが、奪三振率の高さがかなり高く評価された。これによってサイ・ヤング賞の最終選考に残る可能性も出てきた。

打撃成績を見てみると、やはりジャッジが…

 続いて打撃成績だ。

【次ページ】 大谷には加味されない「守備ポイント」の存在

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