酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
大谷翔平の2022二刀流成績詳細「サイ・ヤング賞級の奪三振率+破天荒なW規定」は例年なら文句なしMVPも「ジャッジとの争い」では…
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2022/10/12 06:00
投打両面で一流の成績を残した大谷翔平。ジャッジとの“MVP論争”も起きたシーズンだった
それでも打点が95もあったのは、安打数が22本、二塁打も4本増えて、本塁打以外で打点に絡む殊勲打が増えたことが大きい。
四球が減ったのは、途中で戦線離脱したもののマイク・トラウトが118試合に出場し40本塁打を打ったことで、投手が大谷との勝負を回避しなくなったからだろう。
ただ、走塁に関しては11盗塁したものの9盗塁死と失敗が目立った。投げて打って大活躍している大谷に「走って」まで求めるのは贅沢すぎる。「二刀流」を今後も続けるのなら、塁上では自重しても良いのかもしれない。
打者・大谷は昨季より「安定した数字」を積み上げた
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打者としての月間成績も見ていこう。
4月:21試89打22安4本11点4盗6四 率.247
5月:28試100打25安7本21点3盗12四 率.250
6月:26試94打28安6本17点1盗17四 率.298
7月:24試85打19安5本13点3盗17四 率.224
8月:28試101打32安8本20点0盗12四 率.317
9、10月:30試117打34安4本13点0盗8四 率.291
派手な成績を残した月はないが、安定して数字を積み上げた。6、7月に四球が増えたのは、僚友トラウトが戦線離脱したことが大きいだろう。
なお8月30日のヤンキース戦で盗塁死して以降、大谷は盗塁を企図していない。前述したように規定投球回数到達の目標の前に、リスクを回避したというところか。
出場試合数はリーグ4位タイ、本塁打数は4位、打点は7位、打率は25位だった。ただしOPS(出塁率+長打率 強打者の指標)は.875で5位だった。投手としても、打者としてもリーグトップクラスの成績を挙げている。
「ダブル規定クリア」は歴史的に見ても破天荒の記録
「規定打席」と「規定投球回数」を同一シーズンにクリアするというのは、歴史的にどんな意味があるのか。
ベーブ・ルースはレッドソックス時代の1918年に13勝7敗、防御率2.22でア・リーグ8位にランクされた。しかし打者としては11本塁打で本塁打王、打率.300をマークしたが、MLB公式サイトの打率のランキングには載っていない。
翌1919年は29本塁打で連続本塁打王。打率.322で7位に位置している。投手としても9勝5敗、防御率2.97だったが、同じく防御率のランキングには載っていない。
当時は規定打席という概念はなく、出場試合数だった。1918年は、当時出版された記録書でルースは打率でランキングされていたと言う説もあるが、MLBがアメリカン・リーグとナショナル・リーグの二大リーグ制になった1901年以降、この2年のルースが「規定打席」と「規定投球回数」両到達に迫った唯一の例と言ってよい。
それ以前、19世紀の野球では投打の分化が明らかではなく「二刀流」の記録は散見される。