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4年前、大阪桐蔭“最強世代の1番バッター”はなぜ笑わなかったのか?「“無”になりました」「根尾とか藤原の陰にうまく隠れられた」
posted2022/10/14 11:02
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
大阪桐蔭にはクールなイメージがある。
バッターランナーの一塁ベースへのヘッドスライディングが原則禁止なこともあって、ユニフォームが真っ黒になる選手は少ない。そして、精鋭が集まる高校野球の「常勝軍団」でもあるため、なおさら世間にそんな先入観を抱かせてしまっているのかもしれない。
宮﨑仁斗(じんと)はそのなかでも恬淡な男だった。
ホームランを打ち、試合を決めるタイムリーを放っても、あまり感情を表に出さない。
極端に言えば、“笑わない男”だった。
「高校時代は特に、試合中にガッツポーズとかあんまりしないようにしてたんです。感情の波を出さないように意識していましたね」
宮﨑は自らの深層心理を把握した上で、あえて“笑わない男”を演じていたのだ。
「プレッシャーとかにあんま強くなかったんすよ、多分、僕は」
入学後のノック見学に…「あれはビビらせにきてます」
奈良県出身の宮﨑は、志貴ボーイズに所属していた中学時代、正捕手として全日本の西日本選抜に選ばれた。代表ではのちにチームメートとなる石川瑞貴と3・4番コンビを組み、柿木蓮がエースだった。大阪桐蔭に入学したのは、ボーイズの監督である広瀬亮が同校出身で、1学年上の小林大介ほかその道に進む先輩が多かったことから、自然と「自分も行きたい」と思うようになったのだという。
画に描いたようなエリート。宮﨑と同じ2016年入学組は、そんな選手ばかりだった。
中日本選抜で世界一となった飛騨高山ボーイズの根尾昂と東海ボーイズの山田健太。関西からもオール枚方ボーイズの藤原恭大、福島シニアの中川卓也ら、中学時代から名を馳せていた猛者が大阪桐蔭の門を叩く。
宮﨑は畏怖の念に駆られていた。