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「苦しいんです」大阪桐蔭・根尾世代“あの笑顔の2番”が野球ノートに書いた苦悩…その時、西谷監督は何と返した?《大卒後は社会人野球へ》
posted2022/10/14 11:01
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Hideki Sugiyama
2018年。高校野球界の巨人には、不動の2番バッターがいた。
大阪桐蔭の青地斗舞(とうま)が、173センチの体躯を巨大に見せる。
アルプススタンドから轟く旋律『紅蓮の弓矢』。打席で上体を大きくのけぞらせるオーバーアクションは、ピッチャーを威圧するには十分だ。そうかと思えば、バットを構えると爽やかな笑顔を相手に向ける。
そのギャップが、彼の代名詞でもあった。
名門のレベルに唖然…「同級生の誰にも勝てない」
甲子園の全試合で2番に座った青地は、46打数18安打、打率3割9分1厘のハイアベレージで大阪桐蔭の春夏連覇に助力した。
野球では小さな部類に属する身長。左投げも、守れるポジションが限られるため、不利という見方が一般的である。
そんな不安要素を微塵も感じさせないパフォーマンスを、左投げの外野手は見せつけた。
「僕、早熟だったんで小学生までは大きくてピッチャーだったんですけど、中学からはずっと『勝負するポジションは外野』だと思っていたんで、当たり前の感覚でした」
高校入学前から、青地にはハンデを感じさせないだけの武器、バッティングがあった。
小学6年生だった12年。藤浪晋太郎と森友哉のバッテリーで春夏連覇を果たしたチームに憧れて以来、大阪桐蔭で野球をすることだけを考えてバットを振った。中学時代に所属していた河南リトルシニアでは1年から4番を務め、巧みなバットコントロールでチームを全国へと導いた。その存在が西谷浩一監督の目を引き、念願を叶えた。
誰にも負けない――小さな好打者はしかし、名門のレベルの高さにプライドが揺らぐ。
とりわけ青地が格の違いを見せつけられたのが、中学時代に対戦経験のあった藤原恭大だった。同い年とは思えない筋骨隆々の肉体。入学直後から柵越えを連発するそのバッティングを目の当たりにし、言葉を失った。