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「藤井聡太竜王が“初手・お茶”じゃなくて水!?」「永瀬王座vs豊島九段はバチバチな名勝負」観る将マンガ家が描く“9月の将棋名シーン”
text by
千田純生JUNSEI CHIDA
photograph byNanae Suzuki/Junsei Chida
posted2022/10/01 06:00
観る将マンガ家が描いた「2022年9月の将棋ハイライト」。過去のイラストは関連記事からご覧になれます!
さらには久保利明九段を下した棋王戦挑戦者決定トーナメントではベスト8、前述の将棋日本シリーズではベスト4進出。さらに12日の順位戦A級では糸谷哲郎八段相手に勝利し、2勝1敗としています。
タイトル10期に続いては最年少六冠、最年少名人への道……など数々の記録が報じられることになりそうですが、きっと藤井竜王は目の前の一局一局を全力で戦っていくんだろうな、と。
3)永瀬−豊島の王座戦が凄まじい&王将戦挑決も!
王座戦では永瀬王座と豊島九段がバチバチの名勝負を繰り広げています。この2人といえば「叡王戦での千日手」を筆頭に凄まじい展開になることが多々ありますが、今回もそうなっています。
象徴的だったのは9月13日、名古屋市で開催された第2局でした。
1日制でスピーディーな展開になるとはいえ、午前中だけで進んだのはなんと「93手」……。主催の日本経済新聞なども「驚異のハイペース」と報じるなど〈午前なのにもう終盤戦〉状態に。関西的なユーモアあふれる立会人の福崎文吾九段も「早く終わったら(名古屋にある)レゴランドいこかな」と話していたのですが——そこから午後の戦いを経て、19時前に千日手が成立。迎えた指し直し局、豊島九段が投了したのは22時過ぎのこと。2人、そして福崎九段も関係者の皆様もただただお疲れ様でした……。
27日に京都市で開催された第3局も、開始1時間で71手が進む超ハイペースに。研究の成果もあったのでしょうか、永瀬王座が持ち時間を1時間56分残して93手の勝利となり、王座4連覇へあと1勝としました。4日の第4局の会場は将棋ファンおなじみの元湯陣屋です。「陣屋事件」の舞台となった場所だけに、何かが起こるような予感も……。
9月からは藤井王将への挑戦権を懸けた「王将戦挑戦者決定リーグ」が開幕しています。
〈挑決リーグ参加棋士:渡辺名人、永瀬王座、羽生九段、近藤誠也七段、豊島九段、糸谷八段、服部四段〉
若手からレジェンドまで、イラストにたびたび登場している棋士の方々が相まみえます。それぞれの戦いからも目が離せません! あと編集さんにも「ああ、それすごくわかります」と言われたんですが——王将リーグが始まると年の終わりを感じるようになり、少し焦りますね(笑)。
最後に。有吉道夫九段が、9月27日に87年の生涯を閉じたとの報に接しました。棋聖獲得やNHK杯優勝を果たすなど通算1088勝、74歳までプロ生活を続けられたことに驚くばかり。羽生善治九段も「何度も公式戦で教わりましたが、序盤の研究が深くいつも勉強になりました。対局中は闘志溢れた姿でしたが、日常はとても気さくで朗らかな先生でした」と記されていたり、さらに師匠は大山康晴十五世名人ということも知り、将棋の歴史の深さを感じるばかりです。ご冥福をお祈りします。
10月からは藤井竜王に広瀬章人八段が挑む竜王戦七番勝負が開幕します。去年の第1局を観戦した時の興奮が蘇ってくる……。Numberでも再び将棋特集号が発売されるとの話も聞きましたし(笑)、「将棋の秋」を堪能したいと思っています! <構成/茂野聡士>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。