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「クジを外して良かったかも…」巨人スカウトが明かす”外れドラ1"大勢がクローザーで大化けしたワケ《新人最多セーブ記録まであと1S》
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2022/09/26 17:02
巨人の球団新人記録36セーブをあげているクローザーの大勢。プロ野球新人タイ記録まであと1セーブに迫っている
大勢は大学3年秋に右肘の炎症、4年春にも右肘の疲労骨折と、2度の肘の故障歴を持っている。サイド気味のスリークォーターから肘のしなりを使う独特なフォームも原因の一つかもしれないが、いずれにしろ1年目から過度な負担をかければ、故障の危険性が付きまとうということだ。
大勢のリリーフ起用を提案したのは…
そこでリリーフでの起用を提案したのが桑田真澄投手チーフコーチだったという。
「オープン戦の最中に真澄と(阿部)慎之助(作戦兼ディフェンスチーフコーチ)と話をしたときに、真澄から後ろで使いましょうという提案を受けた。チーム事情も考慮しながら、色々と話し合った結果、まずはリリーフでいこうということになった」
原監督はこう説明していた。
もちろん当初は中継ぎでという構想だった。ところがクローザー候補だったチアゴ・ビエイラ投手とルビー・デラロサ投手の2人が、共にオープン戦から全く結果を残せなかった。その中でオープン戦から150キロ台の真っ直ぐで相手打者をねじ伏せる大勢のピッチングに、一気にクローザーでという機運が高まり、それが現実となったわけである。
ただ、ここでいきなりクローザーに抜擢されたことも大勢にとっては、飛躍の要因だった。
クローザーとなって良かったのは、肘に不安のある大勢にとって試合中にある程度、登板が読めるので、それに合わせて準備をできることだった。
中継ぎ投手が一番大変なのは、試合中に何度も肩を作ったり、展開によっては急に登板準備をしなければならないケースがあることだ。しかしクローザーは出番が決まっているし、試合展開を読みながら準備をできることだ。
3連投はさせないというルール
もちろん登板シチュエーションは過酷で、精神的な負担は大きいが、それでも肉体的な管理はしやすい。その上で首脳陣は過度な負担をかけないために3連投はさせないというルールを作り、連投した翌日にはベンチからも外して休養を与えてきた。
そうしたベンチの配慮に応えるように、大勢も開幕からマウンドに上がる度に結果を積み重ねて、チームの勝利に貢献してきた。
それにしても1年目から、これほどまでの結果を残すとは……。あのドラフト指名のときには、全く予想できなかったのも確かかもしれない。