大勢のボールには1つだけ、ある特長が…

　常時150キロ台をマークする真っ直ぐとフォークを軸にしたパワーピッチが大勢の持ち味。サイド気味の変則フォームで、基本的には真っ直ぐがシュート回転する。ただ、大勢のボールには1つだけ、ある特長があるとそのスカウトが言っていたのを覚えている。

「右打者の外角に投げたボールだけは、あまりシュートしないんですよ」

サイド気味の変則フォームで150キロ超の速球とフォークを軸に、ルーキーながら巨人の守護神として奮闘してきた大勢　©︎Naoya Sanuki

　右投手でも左投手でも真っ直ぐがシュート回転してしまうと、それは致命的な危険因子となる。

　投手の基本は「原点投球」というのは、亡くなった野村克也元ヤクルト監督だった。

「すべてのピッチングの原点は外角低めの真っ直ぐ。その原点投球の力を養うことが、投手の先ず課せられる課題だ」

　野村の教えである。

　ところが真っ直ぐがシュート回転すれば、当然、その“原点”を狙ったボールがホームプレートの中に、中に入ってくることになる。苦しいときにこそ必要な“原点投球”が、逆に打者にとっては甘い絶好球になる危険性を孕むことになる、ということだ。

　大勢の投球を見ていると、ほぼほぼ真っ直ぐはシュート回転で、フォークも少しシュート気味に右にスライドしながら落ちる。それが右打者には真ん中からインコースに投げれば、手元で食い込んでくる球筋となり、左打者には逆に逃げていく球筋となって、有効な武器となっているわけだ。

　ただ、確かに外を狙った真っ直ぐはあまりシュートしないで、むしろカット気味に外角に決まることが多い。

「サイドスローやアンダースローの投手の外角の球がシュート回転するなら、手首を立てればいいんだ」

　巨人の投手コーチ時代の堀内恒夫さんからこんな話を聞いたことがある。

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