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高橋藍(21歳)世界バレーを終えて再びイタリアへ「勝てた、と思う試合だからこそ涙も出なかった」「ワールドクラスの選手にならなければ」 

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高橋藍

高橋藍Ran Takahashi

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/09/23 17:02

高橋藍(21歳)世界バレーを終えて再びイタリアへ「勝てた、と思う試合だからこそ涙も出なかった」「ワールドクラスの選手にならなければ」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

新シーズンに向けてイタリアへ旅立った高橋藍(21歳)。世界選手権でつかんだ自信と課題、そして日体大を始めとする周囲への感謝を胸に挑戦を続ける

 あと11点。でも勝負は簡単ではありません。勝利が見えたことで、僕たちは点数を取り急いでしまいました。

 今こうして冷静に振り返ればそれもわかるのですが、あの時はそれすら気づかなかった。無意識に「勝てる!」と思えた試合だからこそ、先ばかり見て獲り急いでしまった。1点、1本を見るのではなく、あと2本、3本獲りたいと欲が出てしまった。その結果、イージーミスが出た時に必要以上のダメージを与えられたように感じたり、相手のいいサーブが入ってきた時のプレッシャーに押され、焦ってしまいました。

 自分たちでリズムをつくることができず、むしろ自分たちでリズムを壊してしまった。経験の差が出てしまって、(点が)獲れている時はいいけれど、獲れなかった時にどう立て直せばいいのかがわかっていなかった。反対にフランスはたとえリードされても15点までの中でどうやって試合を展開して追いつき、追い越すか。具体的なイメージやプランを持って戦っていたので、僕らがリードしても崩れない。経験の差、強さを実感しました。

 それでも、再び逆転して迎えた日本のマッチポイント(15対14)で石川(祐希)選手にサーブ順が巡ってきた。あの時は完全に「勝てる!」と思ってしまった。いや、正直に言うならば、「祐希さんならやってくれる!」と託す思いしかありませんでした。

 しかもその前にフランスは(イアルバン・)ヌガペト選手がミスをした。もともと圧倒的にミスの少ないチームに、あり得ないことが起こって日本にマッチポイントが来た、という状況。ましてやサーブを打つのが石川選手ならば絶対大丈夫、と思って、何もアクションをしなかった。

 その思いが強すぎたせいか、石川選手のサーブがネットにかかった時、僕を含めた全員が、次に向けたリセットができていませんでした。

 今思えば、あの時に一度集まって「もう1本」「この1本を獲りに行こう」と落ち着いて声をかけ合っていれば結果は違ったかもしれない。同様に、悔やんでも悔やみきれないのが、ヌガペト選手の試合を決めた最後の1本です。

最後の1点「ブロックにいけばよかった」

 16対17、フランスのマッチポイントで西田選手のスパイクを拾われて、前衛にはヌガペト選手がいる。絶対に打ってくるとわかっていたので、自分もブロックに跳んで3枚で防ぐべきではないか、と考えながらも僕は行けませんでした。

 普通に考えれば絶対に(得意な)クロスへ打ってくるだろうということがわかっていたけれど、技術に長けたヌガペト選手ならば裏をかいてフェイントを落とすかもしれない。自分がブロックに跳べばうまく使われてしまうから、ミドルブロッカーに任せたほうがいいだろう。迷った結果、跳ばなかったのですが、案の定、予想したコースに叩きつけられた。

 その瞬間、甘かった、と痛感させられました。

 たとえ決められても(ブロックに)行けばよかった。そのほうが後悔は少なかっただろう、と何度も考えました。だからこそ本当に悔しくて、悔しくて。勝てた、と思う試合だからこそ涙も出なかった。同じ経験、思いをしないためにもっと強くならなければならない。自分もワールドクラスの選手にならなければならない、という思いがさらに強くなりました。

 そのための選択、決断の1つとしてイタリアでのクラブシーズンを全力で戦うために、大会を終えて間もない13日、僕はイタリアへ出発しました。

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