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「レオタードがルールで決められている以上、刑事事件化は難しい」競技団体が苦慮する“性的画像”対策「観客席からの撮影を禁止したケースも」
posted2022/09/25 11:04
text by
鎌田理沙(共同通信)Risa Kamata
photograph by
Getty Images
前編に引き続き、『アスリート盗撮』(ちくま新書)=共同通信運動部編〈鎌田理沙、品川絵里、益吉数正、田村崇仁〉=より内容を一部抜粋して掲載する(全3回の3回目/#1、#2からの続き)。
警察署に連れて行かれた彼らが、翌日また会場に…
アスリートの盗撮問題は取材班でテーマを掘り起こしてニュースを出すタイミングをうかがう一方、同時進行で進めていた周辺取材から、競技団体や大会を運営するサイドも対応で苦悩してきた長年の経緯が見えてきた。
「スタンドで保護者の方が「自分の子どもが写されている」と気付いた。係の者が駆けつけて連れて行こうとしたらもみあって逃げた人が1人いたんです。騒ぎになって、最終的には10人近い人たちが盗撮をしたということで集められた。通常1、2人であれば中身の写真を出させて、「駄目だからもうやるな」と諭して帰すことが多かったのですが、警察が来たので取り調べを始めてもらいました。最終的にパトカーも来て、署に乗せて行きました」
取材に答えてくれた選手からの情報で「あの会場で隠し撮りが多かったと聞いた」と言っていた陸上の大会のうち、ある運営関係者が明かしてくれた話の驚くべき場面の一部だ。
「署に連れて行かれたあと勾留はされていないので、なんと翌日また彼らが来たわけです。だから試合中も通路に立って、ずーっとその人たちを見ておかなきゃいけない。(現行の法整備では)完全に罪に罰せられることがないと分かっているから、またチャンスがあれば......と思って来るわけです」
「大会の規制としては撮影禁止エリアをしっかり明記して、会場に入るときはカメラをしっかりチェックして望遠レンズや疑わしい品質のものは駄目だと注意する。しかしホームカメラのような見かけでも赤外線機能が付いているものがあって、そういういいカメラをお持ちの方もいる。それで会場で撮った画像を見せなさいと言っても、すでにデータがサーバーに移されている」
一方的に性的な切り取り方をする隠し撮りはしないでくださいと呼びかけている運営側と、法に裁かれることがないと知っているから大胆に、時には選手の保護者の前で隠し撮りを続ける撮影者。会場での規制は“いたちごっこ〞だと、担当者はやりきれなさをにじませていた。
赤外線の隠し撮り対策を続けるスポーツメーカー
選手への取材を続けていると、以前から隠し撮り対策に取り組んでいるというメーカーの名前を耳にすることがあった。