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「レオタードがルールで決められている以上、刑事事件化は難しい」競技団体が苦慮する“性的画像”対策「観客席からの撮影を禁止したケースも」
text by
鎌田理沙(共同通信)Risa Kamata
photograph byGetty Images
posted2022/09/25 11:04
各競技団体に女子選手への“性的画像”被害について取材し、浮かび上がってきた被害の実態とは…
競技団体は被害対策との間で板挟みに
「一般撮影を許可している競技は対策を放棄している」と受け取られがちだが、取材をしてみると一概にそうとも言えないことが分かった。選手を狙った撮影者がさまざまな会場に足を運んでいて、運営管理者はどこの競技でも被害を認識したうえで、対策に苦慮しているということだ。
陸上競技やバレーボールのようにファン向けの撮影を自由にしているからといって、事態を軽視しているわけではない。写真を撮りたいファンや選手の身内の気持ちを尊重したい意向がある一方、被害対策との間で板挟みになっている。
各団体の対策は次の通り。
ハイレグの形でなくなってから、被害件数は大幅に減った
▼競泳(日本水泳連盟)
00年ごろ、連盟主催で無料入場の大会において、一般撮影は許可制に移行。なお有料大会において規制はしていない。
08年ごろ、北京五輪に向けて足首まで体を覆うスピード社の水着が男女ともに主流となり、隠し撮り被害の件数が減少したことを認識した。
規制のなかった当時は、泳ぐ前やプールサイドに上がる際、お尻などを狙ってシャッターを押す、怪しい撮影者が観客席にいると通報があった。水着がハイレグの形でなくなってから、被害件数は大幅に減ったという。
観客席からの一般撮影を全面禁止
▼フィギュアスケート(日本スケート連盟)
05~06シーズンから、観客席からの一般撮影を全面禁止。
観客席から望遠レンズで撮影し周りの方々へ迷惑をかける事例が発生し、観客が撮影したと思われる写真がネット上のオークションなどで販売され、選手の肖像権を侵害する行為が多発したため。
現在は大会ホームページでの事前告知、会場内での見回り、場内アナウンスでのお願い、手荷物チェックなどで周知を徹底。隠し撮り被害は、多くのトップスケーターを含めた選手がターゲットにされたものが確認されている。
協会が警察に相談したところ…
▼体操(日本体操協会)
00年4月、会場での撮影・取材を一部制限。
01年4月、規制対象の望遠レンズの長さを200ミリから210ミリにするなど、規定を一部改正。
04年2月、一般撮影と報道撮影の分離をしたうえで、一般撮影の禁止に踏み切る。ただ選手の所属クラブなどによる競技力向上を目的とした動画撮影、選手の親族らによる記念撮影などは、入場時の申請により撮影許可証を発行するなどして対応。また協会主管の大会以外の撮影規制は、主管団体の判断に委ねている。
協会が警察に相談したところ、レオタードで演技することがルールで決められている以上、それを防ぐためには撮影禁止の規制を設けること以外、どんなに選手の望まない下半身をクローズアップしたような写真を売っているとしても、刑事事件としての取り扱いが難しいと回答されたことが一因。
隠し撮り被害は、体操、新体操、トランポリン、一般体操も含むすべての女性選手がターゲットとなって、自身の望まない写真や動画を撮影されてインターネットで販売されていたという。