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「レオタードがルールで決められている以上、刑事事件化は難しい」競技団体が苦慮する“性的画像”対策「観客席からの撮影を禁止したケースも」
text by
鎌田理沙(共同通信)Risa Kamata
photograph byGetty Images
posted2022/09/25 11:04
各競技団体に女子選手への“性的画像”被害について取材し、浮かび上がってきた被害の実態とは…
埼玉県熊谷市に本社を構え、陸上競技のウエア開発や物品提供を中心としたスポーツ用品メーカー「クレーマージャパン」は、赤外線搭載カメラによるユニホーム透視を防止できる粒子を吹きかけた製品を07年に開発。女性選手用のランニングブラや、既製のユニホームに差し込むパットなどを生産し、学校関係者への営業を通して商品販促を行ってきた全国的にも珍しい会社だ。
05年、当時会社の役員が代表を務めていた日本学連から、「隠し撮り対策ができる製品を作ってほしい」と要望があり、開発に乗り出した。2年をかけて製品販売にまでこぎつけたが、現場での反響や売り上げは「思ったよりなかった」(担当者)という。
「会場での規制をかいくぐって隠し撮りをする人たちは絶えない。一方で我々がこういう製品があるので買ってください、と宣伝するのは(選手たちに間接的に被害を教えることになるので)露骨には憚られる。大学の先生も「被害はあるよね」という認識だったが、じゃあ選手に買ってあげようというところまではいかなかった。自分たちは別に(大丈夫)という雰囲気で、当時はなかなか選手自身が被害を目にすることが少なかった。ここまでする必要があるかは伝わっていない」
売り上げは取材当時の数字で、パットが2000セット、ショーツは150枚弱ほどだったという。担当者は従来の硬い素材だと競技がしにくいため製品自体に改善の余地があると指摘。
問題の深刻さが現場で共有されていない?
さらに開発を始めた15年前から現状が変わらない理由について、そもそも問題の深刻さが現場で共有されていないからかもしれないと話してくれた。
「理想論ですが、こういう素材がユニホームに標準装備されていて、選手が自然に守られるのが1番かなと思っている。(被害があるのかどうか)半信半疑でなかなか受け入れないこともあると思う。自然と身につけてもらえるようなものを作ることで、開発当時の代表の思いを受け継いで、次の段階にいかなくてはいけない」
国内競技団体も苦悩とジレンマを抱えている。女性アスリートが狙われそうな競技は?とスポーツ関係者に問うと、多くの人が水泳、体操、フィギュアスケート、陸上、バレーボールといった競技を挙げた。大会や連盟で指定されているユニホームや衣装の形状が独特で、露出が多い点が共通点として推測できた。
各連盟に取材を申し込み、対策や会場の現状を回答してもらった。競技によっては一般客による撮影を全面禁止にしているところもあった。