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「あのユニフォーム、今どうなった?」国内大会で着用者なし…性的画像被害を防ぐ“ユニタード”が体操界で普及していない「3つの理由」
posted2022/09/23 11:02
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
今春以降、全日本体操個人総合選手権やNHK杯、全日本種目別選手権、そして全日本シニア選手権も行われた。
シーズンが進む中で、ふと問われたことがある。
「あのユニフォームはどうなったのですか?」
あのユニフォームとは、「ユニタード」のことだ。昨夏に行われた東京五輪で、注目を集めたことを記憶している人も少なくないのではないか。体操女子団体に出場したドイツが着用した、足首まで覆うタイプのものだ。
ドイツは東京五輪に先駆けて行われた欧州選手権でも着用していたが、オリンピックという大舞台で広く知られることになった。
ユニタードが東京五輪で注目を集めた経緯
注目と話題を集めた理由は、従来の体操女子はレオタード、というイメージを覆すスタイルであったこととともに、近年のスポーツ界が向き合ってきた問題が結びついたことにあった。それを端的に示していたのはドイツ体操連盟による声明にあった、「スポーツを性の対象として扱うことに対する抗議である」の文言である。
言葉にあるように、近年、体操に限らず、さまざまな競技で、盗撮や性的な目的での画像の拡散による被害が大きく取り上げられるようになっていた。その中で現役、引退を問わず選手たちも実体験を踏まえるなどして発言する機会が増えると、あらためて深刻な状況と、問題が放置されてきたことが浮き彫りになった。
そうした流れを受ける形で、オリンピックの開催を前に、日本オリンピック委員会などが共同声明を出し、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会も会場への入場者に対する禁止行為の中に「アスリート等への性的ハラスメント目的との疑念を生じさせる写真、映像を記録、送信もしくは作成すること」を加えた。
そして迎えた大会で、ドイツチームが注目されることになった。