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舞の海の“頭にシリコン”だけじゃない? 角界入りをかけた新弟子検査の悲喜劇「測定時に背伸び」「横になったままトラックで会場に」
posted2022/09/18 11:02
text by
荒井太郎Taro Arai
photograph by
Getty Images
昨年の学生横綱で日大出身の川副圭太がこの秋場所、幕下15枚目格付け出しで角界入りを果たした。デビュー戦ではいきなり元大関・朝乃山との対戦が組まれたが、さすがに大関経験者の圧力は格が違い過ぎた。右をねじ込まれると一方的に攻め立てられ、土俵際では得意のうっちゃりで逆転を狙うも朝乃山はしっかり腰を割り、慎重に寄り倒した。
デビュー戦は黒星を喫したものの、師匠の宮城野親方(元横綱・白鵬)は「小さい白鵬を見ている感じ」とかける期待は大きい。それほどの逸材も、場所前の新弟子検査では「あわや不合格!?」という冷や汗をかいた。
体格基準に満たない者たちの「涙ぐましい努力」とは
力士になるには、身長167センチ以上、体重67キロ以上という体格基準をクリアしなければならない(3月場所新弟子検査受験者で中学卒業見込者に限り、身長165センチ以上、体重65キロ以上)。ただし、付け出し資格を持つ者については、体格基準は不問とされている。しかし、166センチ、110キロの川副は受験当日、親方衆から「付け出しでも身長が足りなかったらダメでしょ」という話を聞かされ、一時は絶望したという。結局、検査後に説明を受けて事なきを得たが、過去には身長が規定に足りず、涙ぐましい努力の末、合格にこぎ着けたケースも少なくない。
現在は相撲解説者の舞の海秀平さんが、入門時、身長が規定(当時は173センチ以上)に足りなかったため、頭部にシリコンを注入して合格したエピソードはあまりにも有名だ。身長は本人の努力だけではどうすることもできない面もあるため、少しでも身長を高く見せようと頭髪を不自然に盛り上げたり、測定時に思い切り背伸びをして“お目こぼし”で合格を勝ち取ろうという悲喜劇が生じることもある。