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「ドリームチームに勝つなんてバカげているって言われますけれど…」日本バスケが本気で“世界一”を目指すために仕掛けた30年後への投資

posted2022/09/12 08:23

 
「ドリームチームに勝つなんてバカげているって言われますけれど…」日本バスケが本気で“世界一”を目指すために仕掛けた30年後への投資<Number Web> photograph by Asami Enomoto/JMPA

日本バスケの現在地を赤裸々に記した「テクニカルレポート2021」。発起人の東野強化委員長は「未来の宝物」だと語った

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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Asami Enomoto/JMPA

今年6月、日本バスケットボール協会は「テクニカルレポート2021」をウェブサイト上に公開した。日本代表の弱点までもが記された約150ページにもおよぶレポートは、いかにして作られたのか。当事者たちの思いを取材した。全3回の3回目(#1#2を読む)

 日本バスケットボール協会が6月に公開した「テクニカルレポート2021」には、それぞれ『はじめに』と『終わりに』という章があり、レポート作成にこめられた思いが語られている。

 たとえば、女子代表の『はじめに』の章では、レポートの目的について次のように書かれている。

「第一に、“過去の女子日本代表との比較” である。具体的には2018年にスペインで開催されたワールドカップ(以下、2018W杯) のデータと比較することで、銀メダルを獲得できた要因を探る。また、2つ目は“世界との差”を知ることである。銀メダルを獲得したということは、現時点で日本は世界第2 位の力を持っていると考えられる。それは紛れもない事実ではあるが、順位による漠然とした印象ではなく、オフェンス、ディフェンス、リバウンドなどのそれぞれのランキングやそのデータを知ることで、あらためて“日本女子代表チームの強み”は何だったのか、金メダルを獲得するために足りなかったもの= “日本女子代表チームの課題”がどこにあったのかを明確することができると考えている」

 過去の日本代表との比較と現状の世界との比較、言い換えれば縦の比較と横の比較だ。それをやることで、日本の現状が立体的によりはっきりと見えてくる。また、大会銀メダルを取った女子代表の成果の中で、男子代表の参考になることも見えてきた。

女子代表の「銀メダル」は男子代表にも生かせる?

 たとえばサイズや体格で他国に劣る日本にとって「永遠の課題」とされるディフェンスリバウンドの分析はその一例だ。

 女子代表のレポートでは、2016年リオ五輪、2018年スペインW杯、2021年東京五輪と、近年、世界大会ごとにディフェンスリバウンド獲得率(DR%)が向上して、東京五輪では過去最高の74%のDR%を記録したことを成果として記載。試合ごとに見ても、リバウンドに強いアメリカやフランスとの試合でDR%が75%を超えたことを「特筆すべき快挙」としている。

 その理由としてボックスアウトを徹底したことに加え、日本のトランジション攻撃を警戒した対戦相手がオフェンスリバウンドに積極的に参加しない選択をしたことも指摘。「リバウンドの局面を多角的に分析し、相手がリバウンドに参加しづらい状況という着眼点で取り組んだことは、大きな成果であった」と分析。東京五輪で銀メダルを獲得した女子代表の成功の一端がここに見られる。

 一方、同じディフェンスリバウンドについて男子代表のレポートでは、2019年の中国W     杯で32チームの出場国中最下位の59.2%だった反省から練習を積極的に行ったことで、東京五輪では5.2%向上し、64.6%の獲得率になったと記載。

 ただ、この数字はまだオリンピック参加12カ国中最低の数字だったことを指摘。さらに相手チームにオフェンスリバウンドを取られた状況を分析し、ボックスアウトのミスや努力不足など、身体のサイズと無関係な原因だったことから、「原因の大半はサイズや身体能力の差ではなく、リバウンドへの意識と習慣、またボックスアウト時のコンタクトのスキルの差である」と、今後の課題を明確に指摘している。

興味深い3Pシュートの数値

 また、日本代表が武器とする3ポイントシュートについても、女子代表と男子代表で開きがあることがわかった。女子代表は3ポイント試投数(1試合平均31.7本)と3ポイントシュート成功率(38.4%)のどちらも大会参加国中1位だった。銀メダルを獲得した大きな要因だ。一方で男子代表は3ポイントシュート試投数(28.3本)が参加12カ国中9位で、成功率(34.5%)は大会7位。

 大会全体を見ると、女子より男子のほうが3ポイントシュートを有効活用しているチームが多いということがわかるのだが、それでも日本では男子代表のほうが女子代表より試投数、成功率ともに低い。それでは、世界の強豪と対抗することは難しいということがわかる。

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