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「ドリームチームに勝つなんてバカげているって言われますけれど…」日本バスケが本気で“世界一”を目指すために仕掛けた30年後への投資
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2022/09/12 08:23
日本バスケの現在地を赤裸々に記した「テクニカルレポート2021」。発起人の東野強化委員長は「未来の宝物」だと語った
テクニカルレポートを公開した後に、冨山晋司(日本バスケットボール協会テクニカルハウス部会長)は内容を説明するウェビナーを開催している。6月に行われた第1回は、直前の告知だったにも関わらず育成年代のコーチを中心に約130人が、9月に入ってから行われた第2回はさらに増えて約380人が参加したという。
「レポートを活用する方法っていっぱいあると思っているので。そのためにも知ってもらうことが大事だと思い、ウェビナーをやりました」と冨山。
「育成年代の(コーチの)方たちが考えるきっかけになればいいなというのはあります。読む人によっては難しく感じる人もいるかもしれないですし、マニアックにバスケットを研究している人にとってはこんなレベルかっていう人ももしかしたらいるかもしれない。どういう方々から見ても、気づかなかったこととか、今まで考えてすらいなかったこととかもあるのではないかとは思うので、手に取ってみた方に刺さることがひとつでもあればいいなと思っています」
東野智弥(日本バスケットボール協会技術委員長)も冨山も、今回のレポートはまだ発展途上段階なのだと言う。時間や人員的な余裕があれば入れたかったことは、まだ色々ある。たとえば、将来的にはサッカーのテクニカルレポートのように、他国の戦いについても掘り下げたいと言う。そうすることで、世界と日本の差を理解しやすくなる。
「ドンチッチの何がすごいのか?」
冨山は言う。
「世界との差をどうやったら伝えられるかっていうのが、今、考えているところです。ほかの国がどう戦ったのか。たとえば日本はこう戦ったけれど、こういうふうに戦ったチームがありましたというのは、世界を知るという意味で参考になるのではないかなと。
もうひとつやりたいと思っているのは、選手のピックアップですね。たとえばなんですけれど、大会のベスト5は現代バスケットが考えうる世界最高の5人なわけですよね。今、世界最高のスモールフォワードだったらスモールフォワードはこういう選手なんですよっていうのを、身長や体重、ピック&ロールがどうなのか、数字はどうなのか、シュートはどのエリアからどれぐらい決めているのかを出して、具体的にこういう選手がベスト5に入っていますっていう例をあげることで、自分たちが目指していかなきゃいけない場所を示すことができるんじゃないかなと。あまり言いすぎると、次のレポートのハードルが上がるだけなんですけれど(笑)。
たとえばルカ・ドンチッチ(スロベニア代表)がすごいっていうのはみんなわかると思うんですよ。でもドンチッチがトリプルダブルしたからすごいとか、みんながすごいって言っているからすごいとか、ベスト5に選ばれているからすごいとか、そういうことじゃなくて、本当に何がすごいのか。何ができるからドンチッチはすごいのかといったことが伝われば……。22歳で、あの場であれだけのことをやっていますってなると、それなら22歳でこういう選手を育成するためには、逆算したら16歳、17歳ぐらいでどんなことができていないといけないんだろう、みたいなことを考えるきっかけになれば……っていうような感じですかね」