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大学部活の現実「月1万5000円の部費がツラい」金銭面で退部者続出…「地方国立、弱小、資金難」信州大アメフト部が選んだ“法人化”という劇薬 

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山崎ダイ

山崎ダイDai Yamazaki

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posted2022/09/06 17:00

大学部活の現実「月1万5000円の部費がツラい」金銭面で退部者続出…「地方国立、弱小、資金難」信州大アメフト部が選んだ“法人化”という劇薬<Number Web>

「地方、弱小、資金難」“三重苦”の信州大アメフト部はなぜ“法人化”という選択をしたのか

「何かを変えないとチームが先細りになるというのは目に見えていたんです。少子化もあって、これから先は部員確保もどんどん難しくなっていく。そうなればさらに金銭面の負担も増すでしょう。競技以外の面での憂いを除いていかないと、特に地方の大学の部活は立ち行かなくなるという危機感はありました」

 それぞれの課題を解決するために、部の法人化という話が持ち上がったのは一昨年のことだった。

 だが、すぐに話が軌道に乗ったわけではなかった。

「一番は法人化することとチームが強くなることのリンクというか、理由付けが学生の中でうまくできなかったんですよね」

 2015年からチームでコーチを務める山下紀之はそう振り返る。

 現在30歳になる山下は大学を卒業後、大学院入学を機にチームのコーチを買って出た。それにあたって、日本でも有数の強豪である京大アメフト部を訪ねたという。京大は当時からすでに部の法人化を目指しており(※2016年に実現)、そこで組織運営やコーチングの面で様々なノウハウを目の当たりにした。

「とはいえ、京大とウチでは部の規模や強さが全く違う。法人を作っても事務担当専任の部員を置くようなことはできません。その辺はよく考えて、風呂敷を大きく広げすぎないように、信大の規模に合うシステムにすることは重視しました。

 学生からすると最初は『コーチの言っていることは分かるけど、法人化したところで現実的にどうなるの?』というところがイメージできなかったと思います。『これだけお金が増えるよ』と言われても、具体的に自分たちがどういうアクションをしていけばいいのかというのがすぐには浮かばなかった。だからそこは繰り返し説明しましたね」

 現在法人で学生理事を務め、現役選手でもある中村航太は学生目線からこう振り返る。

「法人化するということになった時に『じゃあこの仕事は誰がやるの?』という問題は絶対に起きると思いました。南主将が言ったように、部員は練習と部費にかかるお金を稼ぐのに必死です。当然、大学の勉強もある。もちろん試合が近づけばトレーニング時間も長くなっていく。その中でどうやって、誰が法人の仕事をやるのか。社会人の専任スタッフがいるわけではないので、学生主体でやるのであればなおさらそういう不安はあった。立ち上げたはいいけど、なぁなぁで終わるんじゃないか――そんな不安もありました」

法人化した結果…資金は集まった?

 ただ、最終的には現状のままでは部が立ち行かなくなる危機感が部員の背中を押した。個々人が部費の支払いで苦しむような状況で、本当に強いチームになれるのか。本気で勝負をかけるならば、現状維持で強くなれるとはどうしても思えなかった。

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