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野球クロスロードBACK NUMBER
“14年前の惨敗”で聖光学院が誓った「人を獲らないで日本一を」初の甲子園ベスト4も仙台育英に…「この大敗もまた壁なのかな」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/08/27 11:00
今夏の甲子園、聖光学院が初のベスト4入りを果たした。“力がない”といわれた2022年世代は、いかに快挙を成し遂げたのか?
因縁の相手との試合。聖光学院は徳俵で力を発揮するような戦いを見せた。
1-1の同点に追いつかれた直後の4回裏。監督が信頼を寄せる下位打線の8番・生田目陽のタイムリーで勝ち越し。5回表にすぐさま同点に追いつかれても、その裏に先頭バッターとして内野安打で出塁した赤堀が、相手の意表を突く単独スチールでチャンスを広げ、一、三塁からゲッツーの間に勝ち越した。この1点をエースの佐山未來が守り抜き、聖光学院は3-2で横浜を退けたのである。
凱歌のとき。横山が監督の肩をバシバシ叩きながらねぎらう。監督もまた、安堵の表情を浮かべながら勝利の余韻を噛みしめていた。
「想いはふたりとも同じだったので。渡辺(元智)監督と小倉部長の時代から薫陶を受けてきて。試合を通して叩かれ、成長を促されてきましたからね。横山部長と私にとって特別な勝利だったことは事実です」
思えばあの時も、歴史の転換点だった。
14年前は1-15の惨敗…「人を獲らないで日本一を目指す」
2008年夏。聖光学院はベスト8という新たな扉を開いた。未知の領域への第一歩となる準々決勝の相手こそ、高校野球屈指の名門・横浜だったのである。
初対決の試合は一方的だった。
2年生4番・筒香嘉智に2ホームランを含む3安打8打点と爆発を許し、打線も相手投手陣の前に沈黙。1-15の惨敗だった。
試合後、敗北に打ちひしがれる聖光学院の控室に、大柄の男がやってきた。健闘を称えながらも、辛辣な助言が飛ぶ。
「あんたらよくやってるけど、ここが限界だと思うぞ。上に行きたかったら、勝ちたかったらいい選手を獲ってこないと」
横浜の当時の部長、小倉清一郎だった。この言葉に、横山の対抗心が沸き起こる。
「聖光学院は今まで通り、人を獲らないで日本一を目指す!」
この大敗が、進むべき道を明確化してくれたのである。聖光学院は現在でもスカウト活動は一切していない。オープンスクールなどで「ここで野球がしたい」と、興味や意欲を抱いてくれた選手を受け入れている。