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野球クロスロードBACK NUMBER
“14年前の惨敗”で聖光学院が誓った「人を獲らないで日本一を」初の甲子園ベスト4も仙台育英に…「この大敗もまた壁なのかな」
posted2022/08/27 11:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Hideki Sugiyama
キャプテンの赤堀颯がくじを引き、こちらをちらっと見た。その瞬間、部長の横山博英は「あいつ、やりやがった!」と直感した。
「でも、赤堀の目を見て安心もしたんだよね。『こいつらならやってくれるだろう』って」
横山と心を通わせるように、赤堀もくじを引く前から覚悟を決めていた。
「どの組み合わせに入っても、甲子園は簡単に勝てる世界ではないとわかっていたので、『どこでもこい!』という気持ちでした」
甲子園V経験校を次々に撃破
聖光学院の初戦の相手は、夏の甲子園優勝2度を誇る日大三だった。それだけではない。横浜、三重、敦賀気比、興南と、ベスト8までの山に全国制覇を経験している強豪がひしめく激戦区。マスコミはこぞって「死のブロック」と表現し、過酷な戦いを強調した。
監督の斎藤智也がチームの雰囲気を話す。
「組み合わせが決まった時は驚いたし、『すごくストレスのかかるブロックだな』と思いましたけどね。でも、選手のほうが意外とケロッとしていましたので。『どんな相手でも勝っていかないといけない』と」
聖光学院は「死のブロック」を制し、春夏通じて6度目の挑戦で初めて準々決勝の壁を破り、初のベスト4まで勝ち上がった。
福島県勢としても51年もの間、閉ざされた扉だったわけだが、歴史の転換にはいつもターニングポイントが存在するものだ。
それが、2回戦の横浜戦だった。
5戦全敗だった神奈川県勢に勝利…去来した思い
聖光学院はこれまで、神奈川県勢と甲子園で5回対戦し全敗だった。このうち2敗している横浜には監督の斎藤智也自身、特別な感情を抱いており、それは初戦で日大三に勝利後、選手たちに放った本音からも窺い知れる。
「横浜には今まで甲子園で勝ったことがない。どうしても勝ちたい」