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4カ国で予選突破、うち3カ国でW杯前に解任…なぜハリルホジッチは“モロッコ国民の敵”になったのか「たとえ名前が“メッシ”でも呼ばない」 

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長束恭行

長束恭行Yasuyuki Nagatsuka

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posted2022/08/23 17:00

4カ国で予選突破、うち3カ国でW杯前に解任…なぜハリルホジッチは“モロッコ国民の敵”になったのか「たとえ名前が“メッシ”でも呼ばない」<Number Web> photograph by Getty Images

8月11日、モロッコ代表監督の職を追われたヴァイッド・ハリルホジッチ監督。“W杯前の解任劇”はなぜ繰り返されたのか

 特定の個人ばかりが注目され、チームに不協和音を引き起こすような「スターシステム」をハリルホジッチは徹底的に嫌う。そして、高慢な選手や規律を守らない選手にはつい高圧的になりがちだ。彼がしばしば「独裁者」と呼ばれる所以はそこにある。

「たとえジエシュの名前が“メッシ”でも呼ばない」

 モロッコ代表でハリルホジッチと最後まで折り合わなかったのが同国最大のスター、チェルシー所属のFWハキム・ジエシュだった。昨年6月、CLファイナルを理由に遅れて代表チームに合流したのち、グループ練習を避けてジムに移動していたジエシュに監督は厳しく当たった。それからのジエシュはケガを訴えて親善試合の出場を拒否。医療スタッフからゴーサインが出ても、今度は試合中のウォーミングアップを拒否してしまう。

「監督の立場でジエシュの行動は容認できない。代表チームで人を欺くことは許されないんだ。100%チームに徹するか、そうでないかのどちらかだ」

 モロッコ国歌が歌えない移民選手に「恥を知れ」と説教してきたように、ハリルホジッチは代表チームを「聖なるもの」と考える。それだけにジエシュのわがままを許せなかった。オランダで生まれ育ったジエシュもまた、国歌が歌えない選手の1人だった。

 その後は両者による非難の応酬が続き、関係は泥沼化。ジエシュ以外にも右SBヌセル・マズラウィ(離脱時の所属:アヤックス→現所属:バイエルン)、MFアミーヌ・アリ(マルセイユ→シャルケ)、FWアブデルラザク・ハムダラー(アル・ナスル→アル・イテハド)、MFユネス・ベランダ(ガラタサライ→アダナ・デミスポル)、MFアデル・ターラブ(ベンフィカ)が監督と軋轢を起こして代表追放、あるいは自ら招集拒否を選んだ。

 そんな中、粛々と世代交代を推し進めたハリルホジッチだったが、今年1月のアフリカ・ネーションズカップ準々決勝でエジプトに1対2で敗れると非難が集中。敗因としてジエシュの未招集を挙げられると「たとえ彼の名前が“メッシ”だとしても、チームを破壊する者を呼ぶことは許されない」と態度を硬化させた。それに反発したジエシュは「ハリルホジッチが下した決定は尊重しなければならないが、そこには嘘が伴っていることは明らかだ」と述べて代表引退を発表。モロッコ国民はヒステリーを起こした。

【次ページ】 代表戦で強烈なブーイングを浴び、SNS上でも…

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