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4カ国で予選突破、うち3カ国でW杯前に解任…なぜハリルホジッチは“モロッコ国民の敵”になったのか「たとえ名前が“メッシ”でも呼ばない」

posted2022/08/23 17:00

 
4カ国で予選突破、うち3カ国でW杯前に解任…なぜハリルホジッチは“モロッコ国民の敵”になったのか「たとえ名前が“メッシ”でも呼ばない」<Number Web> photograph by Getty Images

8月11日、モロッコ代表監督の職を追われたヴァイッド・ハリルホジッチ監督。“W杯前の解任劇”はなぜ繰り返されたのか

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長束恭行

長束恭行Yasuyuki Nagatsuka

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4年前、サッカー日本代表をロシアW杯出場に導きながら、本大会前に解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ。サッカー界に激論を巻き起こした解任劇が、遠くモロッコの地で繰り返された。なぜ“デュエル”を身上とする闘将は、みたびW杯前に職を追われることになったのか。本人と周囲の証言から、その経緯を紐解いていく。(全2回の1回目/後編へ)

◆◆◆

「何を言えばいいのかまだ私にはわからない。失望している。何が起こったのか、どうして起こったのか、落ち着いて分析するにはまだ時間が必要だ」

 8月11日、王立モロッコサッカー連盟はヴァイッド・ハリルホジッチ代表監督の解任を発表した。史上初めて異なる4カ国をW杯出場に導いたのにもかかわらず、大会前に解任されるのはコートジボワール、日本に続いてこれで3度目だ。

 8月15日にモロッコの首都ラバトからパリに向かう直行便で目撃されたという情報以外、まったく動向がつかめなかったハリルホジッチだが、解任発表から8日後、旧知のクロアチア人記者に初めて重たい口を開いた。4年前の日本代表監督解任の際も酷く落ち込み、取材電話に初めて応対したのが発表4日後だったことを振り返れば、改めてショックの大きさが窺える。

サッカー人生の総決算になるはずだったカタールW杯

 フランス語圏で監督キャリアを築き上げたボスニア・ヘルツェゴビナ出身のハリルホジッチだが、ディナモ・ザグレブを指揮した頃に深く接してきたクロアチア記者陣に彼はもっぱら心を開く。このほどクロアチアのサッカーメディア『Germanijak』に掲載された独占インタビューで、彼はカタールW杯をサッカー人生の総決算に考えていたことを初めて明かした。

「私がW杯で指揮したのはたった一度、アルジェリア代表だけ。ブラジル大会の決勝トーナメント1回戦では、優勝国となるドイツ相手に延長戦までもつれ込んだ。そしてカタール大会でキャリアを最高の形で終えるプランを思い描いていたんだ。ところが……。今後の身の振り方については本当に見当がつかない。あらゆることを熟慮しなければならない」

 コートジボワールではローラン・バグボ大統領の政治的介入によってファックス1枚で解任通告を受け、日本では「選手とのコミュニケーションや信頼関係が多少薄れてきた」と田嶋幸三JFA会長に解任理由をぼやかされた。それらのケースと比べれば、モロッコでの解任理由ははっきりしている。

 主力選手との衝突だ。

【次ページ】 「たとえジエシュの名前が“メッシ”でも呼ばない」

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