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「自分たちはそんなすごい選手じゃない」大阪桐蔭は優勝候補なのになぜ驕らない? スター不在の新チームを変えた“三遊間の大声合戦”
posted2022/08/14 06:02
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Fumi Sawai
夏の甲子園・大会5日目に登場した大阪桐蔭は、北海道代表の旭川大高と対戦した。優勝候補筆頭の初戦とあって多くの注目が集まったが、3回までに3点を先行される苦しい展開に。しかし、中盤以降のホームラン攻勢で逆転に成功した。
昨秋の明治神宮大会、そして今春のセンバツを制した大阪桐蔭は、史上2校目となる秋春夏3冠達成への機運が高まっている。それを裏付けるように大会前の展望記事には「どこが優勝するのか」ではなく、「どこが大阪桐蔭を倒すのか」を論点とした内容が多かった。
だが、指揮官・西谷浩一監督の見解はやや異なる。今夏の府大会では7試合で54得点、1失点で勝ち上がる他を寄せ付けない戦いぶりだったものの、新チーム発足時にはこんなコメントを残している。
「今年の打線は“誰に回そう”みたいな軸になる打者がいないんですよ。以前だったら、たとえば森(友哉=西武)のように、“回せば何とかしてくれる”みたいなバッターがいたんですけれど、今年はそうじゃない。その分、全員で繋ぐ意識をしっかり持ってくれているのはありますけれどね」
前チームからレギュラーだったのは正捕手の松尾汐恩(3年)ぐらい。多くが入れ替わったチームの当時の課題は「武器」を探すことだった。自分たちの強みや何か、チームの味方となるものは何か――選手たちはそんな思考を張り巡らせながら、着実に歩みを進めてきたのだ。
「カッコつけて野球をやるつもりはない」
1番打者として府大会で2本の本塁打を放った正三塁手・伊藤櫂人(3年)は、その過程であることを心掛けるようになったと語る。
「自分たちの学年は(他の世代と比べて)力がないと言われていたので、大きな声を出してチームを盛り上げていこうと思いました。カッコつけて野球をやるつもりはないし、声でチームを活気づけていけたらと思ったんです」