甲子園の風BACK NUMBER
昨夏の王者・智弁和歌山がまさかの敗退…“背番号1”を重んじる中谷仁監督を悩ませた“ダブルエース”の存在「僕の経験不足」
posted2022/08/14 11:05
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
KYODO
勝っても負けても、智弁和歌山・中谷仁監督の試合後の取材対応の表情は、一見あまり変わらない。だがこの日ばかりは、穏やかな表情の奥に、深い落胆と後悔がにじんだ。
「僕の未熟さで、選手に迷惑をかけてしまったという気持ちが大きいです」
夏連覇を目指した王者が、今夏は初戦で姿を消した。
抽選会から9日間も空いた大会8日目の、49代表最後の登場で、しかも対戦相手は1回戦を勝ち上がった国学院栃木であったこと。相手の小刻みな継投に目先を変えられ強力打線を封じられたこと。連覇の重圧。思うようにいかなかった要因はいくつかあったが、中谷監督がもっとも悔やんだのが自チームの継投だった。
この日は背番号11の武元一輝(3年)が先発し、6回途中から背番号1の塩路柊季(3年)がリリーフしたが、3-5で敗れた。
巧みな継投で勝ってきた智弁和歌山
中谷監督は就任以来、意表を突く巧みな投手起用で多くの勝利を引き寄せてきた。
昨夏の和歌山大会決勝では、小園健太(現・DeNA)と松川虎生(現・ロッテ)という、のちに2人同時にドラフト1位指名されるバッテリーを擁した市和歌山に対し、背番号18の伊藤大稀が先発し、7回にエースの中西聖輝がマウンドを引き継ぎ勝利に導いた。昨夏の甲子園決勝・智弁学園戦も同じリレーで制した。
今年の春季近畿大会決勝では、タイプの異なる4投手の継投で大阪桐蔭打線を翻弄して3-2で逃げ切り、新チームになってから無敗だった大阪桐蔭の連勝を29で止めた。