“打たせろ！　守ったる！”
　“ここに打たせてくれ！”

　確かに今年の大阪桐蔭の試合を見ていると、プレイボールと同時に投手を盛り立てる威勢のいい大きな声が響き渡っている。特に目立つのは、内野の要である三遊間だ。

府大会から大きな声でチームを盛り上げていた伊藤櫂人（3年）©︎Fumi Sawai

小学校時代からライバルだった伊藤と鈴木

　岐阜県出身の伊藤は、小学校時代から「カル・リプケンワールドシリーズ（12歳以下の少年野球チームによる世界大会）」に出場した経歴を持ち、中学時代を過ごした西濃ボーイズでは日本代表にも選ばれた。憧れの大阪桐蔭に入学した伊藤は、そこである選手と出会う。現在、正遊撃手を務める鈴木塁（3年）だ。

　同じ岐阜県出身で、幼い頃から互いを知る関係。鈴木は隣接する愛知県のチームに所属していたことで公式戦での交わりはなかったが、小学校時代に対戦した練習試合の記憶が色濃く残っていた。

「あの頃、鈴木はピッチャーを務めていたのですが、ボールが速すぎて1本もヒットを打てなかったんです」（伊藤）

「伊藤は小学校の頃から体が大きくて（小6で169cm）、マウンドから見たら威圧感がありました」（鈴木）

　中学に入ると伊藤も鈴木も遊撃手として経験を積んだ。そして入学した大阪桐蔭ではライバルとしてポジションを争った。伊藤は鈴木の「遊撃手」としての特徴をこう明かす。

大阪桐蔭3年・鈴木塁（写真は2022年センバツ）©︎Nanae Suzuki

「鈴木の守備は、とにかく動作がきれいなんです。捕球体勢が流れるような感じで送球ができて……。捕球からステップ、スローまで守備に関しての自分の考え方をしっかり持っているんです」

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