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落合博満がまさかの「(松井は)ヘタ」発言…松井秀喜が明かした“3年間だけの師弟関係”「落合さんにはボロカス言われましたから(笑)」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2023/06/28 11:01
1953年生まれの落合と1974年生まれの松井。約20歳の歳の差がある“師弟関係”だった
「やろうとしていることは、落合さんも僕もあまり違わないような気がするからです。いかにボールを長く見て打てるか。結局は僕が目指したものも、落合さんがやっていたこともそこだと思う。落合さんは体が完全にキャッチャーのほうに残って、なおかつボールをきちっと呼び込むまで、バットが絶対に出てこない。トップのときに体も後ろに残っているし、バットも後ろにあるからボールとの距離がとれるんです。それだけボールを長く見られるから踏み込めもする。でも、あそこからうまく打てるのはやっぱり落合さんの技術があるから。普通は、ああいう形になると、そこからうまくバットが出てこないので、上手に打てる人はそういない。僕もそうなんです。だから見た目の形は違う。でも、やろうとしていることは一緒じゃないかなと思う」
松井にとって落合の打撃理論は、自分のバッティングを考える上で貴重な情報となったわけだ。だからこそ落合の言葉に、真剣に耳を傾けてきたのだった。
松井のメジャー挑戦が決まった直後、落合が松井の打撃について、こんなことを言ったことがあった。
「通用するかどうかといえば、通用はする。でも、松井には大きな欠点がある。あの欠点を直さないと、外角のストライクゾーンが広いメジャーでは苦労することになるんじゃないか」
その大きな欠点とは、スイングの途中で右ひじが上がり、うまくたためないことだった。
「右ひじのこと? 何て言われたか、忘れちゃったなあ。要はいつもボロカスに言われてましたから(笑)。そういえば面白いこと言っていたな。ゴルフのアイアンを打つ練習をして腕の使い方を覚えたほうがいいんじゃないかって。落合さんなりの意図があって、そんなことを言ってくれたんだと思いますね」
ただ、松井自身にとってみると、この右ひじの使い方は永遠のテーマともいえる問題だった。右ひじがうまくたたんで使えないために、バットがカット軌道で入る欠点は、長く指摘されている松井の問題点だった。
「僕の昔からの欠点ですから。それでボールの上を叩いちゃう。それはいまだに出ますよ。自分でも欠点だって分かっているんです」
ちょっと気色ばんで松井はこう繰り返した。
落合がメジャーに足を踏み入れる松井に対して抱いた危惧は、やはり松井をいまだに苦しめているということだった。
落合まさかの「ヘタ」発言
1996年オフ。落合が日本ハムに移籍して、落合先生の松井に対する“野球教室”はひとまず終了した。
その後は松井がメジャーに移籍。会話を交わす機会もなくなったが、2006年のオフに行なわれたミズノのイベントで久々に再会した。その席上で松井のバッティングに関して聞かれた落合は、淡々とこんなことを言っている。