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慶応大・柳田将洋、中央大・石川祐希…あの“NEXT4”はなぜ誕生した?「当時は男子バレーが話題にならなかった」逆風の時代に仕掛けた“人気戦略”
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byShingo Ito/AFLO SPORT
posted2022/07/08 17:01
2014年から男子バレー日本代表を率いた南部正司(右)。現在は男子強化委員長として、代表チームをサポートする
日本開催で試合時間も固定された完全ホームの大会とはいえ、連日ゴールデンタイムで生中継され、日に日に増える観客数と共に、露出も増える。5勝6敗の6位で大会を終え、翌年5月末からのリオデジャネイロ五輪最終予選までの短い期間、石川、柳田を中心に男子バレーを扱う媒体も爆発的に増えた。
人気は十分、あとは結果を、と期待が高まる中で迎えたリオ五輪最終予選。
結果は、8チーム中7位。2大会ぶりの五輪出場を叶えることはできなかった。
「監督として自分の力が足りなかったのは大前提として、大会中に選手のケガなど不慮のアクシデントもあり、ピーキングやコンディション管理の難しさを痛感しました。何より、当時のメンバーをオリンピックに出場させ、オリンピアンにしてあげることができなかったこと。それは本当に申し訳なかった、と今でも胸が痛みます」
「日本のバレーはすごいぞ、と注目させたい」
あれから6年。パリ五輪まで2年と迫る2022年、南部は男子強化委員長に就任した。
代表監督として重ねた経験や、世界で戦うための課題をフィードバックし、同じ轍を踏まぬようトップチームの強化はもちろんだが、アンダーカテゴリーの強化や育成、課せられた任務は山積みだ。
「まずは仕組みづくり。フランスやブラジルの例を参考に、ユースからジュニア、シニアへと続く連携を築かなければなりません。強化という面ではVリーグの発展も不可欠で、パナソニックの監督に(前フランス代表監督の)ティリ(・ロラン)さんを招聘したのもその一策です。
東京オリンピックで世界一になった監督が『日本のリーグは素晴らしくレベルが高く、勝つことがとても難しい』と言い、若い選手たちの可能性が少しでも広がるようにとチャンスを与えてくれる。(ミハウ・)クビアクが来て、日本人選手の意識や技術が引き上げられたように、Vリーグで大学生や高校生も出られる仕組みをつくり、早い段階から高いレベルを経験させる。(日本代表のフィリップ・)ブラン監督も全くの同意見で、できるだけ早い段階から大学生も合宿に参加させたいし、試合にも帯同させたいと考えています。これからの日本代表へつなげるために、各クラブ、大学に何ができるか。僕は全部、つながっていると思うし、つなげられるはずなんです」
実際に、現役大学生の大塚達宣、ラリー・エバデダン、高校生だった牧大晃が今年1月からパナソニックに在籍し、共に練習し、試合にも出場した。南部が言うように、早くからチャンスと経験を広げるための好機と見えるが、強化委員長だけでなくパナソニックのGMでもあることから、自チームだけが得をするためではないか、と好意的な意見ばかりではない。「すっかり悪者です」と自虐的に笑いながら、それでも、と語気を強める。
「就任した頃は、男子バレーが話題にもならず、取り上げられてもネガティブなニュースばかり。何とかしてその状況を変えたくて、人気戦略から着手したせいか、南部はずいぶんと目立ちたがり屋だと思われているかもしれませんが(笑)、主役は選手ですし、世界の中で『日本のバレーはすごいぞ』と注目させたいし、日本の方々にもバレーボールの面白さ、魅力を知ってほしい。代表監督の経験を少しでも活かせるように、時に摩擦も生じますが、今の選手、そしてこれからの選手たちがバレーボールに魅力を感じられる。そんな競技にならなければダメだと思うんです」
逆風でも、ひるむことなく。己の道をまい進していく。
(つづく)
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