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慶応大・柳田将洋、中央大・石川祐希…あの“NEXT4”はなぜ誕生した?「当時は男子バレーが話題にならなかった」逆風の時代に仕掛けた“人気戦略” 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byShingo Ito/AFLO SPORT

posted2022/07/08 17:01

慶応大・柳田将洋、中央大・石川祐希…あの“NEXT4”はなぜ誕生した?「当時は男子バレーが話題にならなかった」逆風の時代に仕掛けた“人気戦略”<Number Web> photograph by Shingo Ito/AFLO SPORT

2014年から男子バレー日本代表を率いた南部正司(右)。現在は男子強化委員長として、代表チームをサポートする

 変化を打ち出しながら、潰えた記憶が鮮やかに焼き付く中、南部体制が本格的に始動したのは14年4月。日本代表登録選手29名が発表されてからだ。

 驚かせたのは、4名の現役大学生。慶応大4年の柳田将洋、筑波大2年の高橋健太郎、中央大1年の石川祐希。中でもサプライズは愛知学院大3年の山内晶大だった。

 柳田、石川は高校時代に全国を制した戦績があり、高橋は石川と共にU18日本代表に選出されるなど将来を期待される選手の1人ではあった。だが、中学まではバスケットボール部で名古屋市立工芸高入学後にバレーボールへ転向したばかりで、全国大会出場の経験すらない山内の選出に、周囲の反応は同じ。

「この選手、誰だ?」

 高校、大学、アンダーカテゴリーでの経験や実績があるわけではないのだから、無理もない。当然ながら自然と注目が集まる。まさにそれこそが、南部の狙いだった。

「パナソニックの監督として、高校生だけでなく中学生の現場にも足を運び、いろいろな方から情報を集め、光る原石がいると言われたらさまざまな場所に行き、実際自分の目で見てきました。その中で、磨けば光る、と目を引いたのが山内です。当時から高いポテンシャルを見せた石川、健太郎に比べればまだまだ、細いし、大きいだけの選手ではありましたが身体能力が非常に優れていた。これは鍛えれば一気に伸びると確信がありましたし、特に2mクラスの大型選手というのは、どうやっても欲しい人材でしたから」

 とはいえ、話題先行だけでは萎むのも早い。結果が求められる中、経験も少ない無名の選手を抜擢する理由は何か。南部には具体的なプランがあった。

「まず世界で勝つために必須だったのが、ミドルの大型化です。山内だけでなく出耒田(敬)、伏見(大和)、健太郎と、2mクラスの選手を揃えて、世界との試合を経験させて鍛えること。どれだけ敏捷性やスピードがあっても、日本で戦うのと世界とでは大きな壁があります。そこを埋めるためには、時間をかけて彼らに経験させることが重要だった。この年はアジア大会がありましたので、試合を重ね、経験を得るという意味では絶好の機会でした」

 さらに、南部が続ける。

“NEXT4”は「まさに狙い通りでした」

「ミドルに限らず、オポジットに清水、リベロの永野、アウトサイドに米山(裕太)といった経験豊富な選手がいる時期だからこそ、若い選手を積極的に起用したかった。石川と柳田もまさにそうです。石川のポテンシャルは高校での結果にも表れている通り、あの世代ではダントツでしたが、柳田には抜群のリーダーシップがあった。1年目は彼らが思い切りできる環境をつくり、2年目から勝負に出る。設計図と言えば大げさかもしれませんが、まず結果が求められるということは重々理解していましたので、アジア大会で準優勝、(15年の)アジア選手権優勝で最低ラインはクリアできた。

 実際、アジア大会で石川も後半から試合出場の機会を増やして活躍し、柳田もサーブという最大の武器をアピールした。翌年のシーズンはワールドカップが最大のターゲットでしたので、そこで彼らを主軸として起用できるかどうか。1年目に試し、手ごたえを得た中で抜擢し、一気に注目を集めたい、と思っていた。その期待に彼らも応えてくれましたし、少しでも多くの人に見てほしい、男子バレーが面白いぞ、と伝えたかったので“NEXT4”としてテレビ局と一緒に4人(石川、柳田、高橋、山内)を売り出した。まさに狙い通りでした」

【次ページ】 注目度は高まるも、リオ五輪出場を逃す

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