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<復帰即ランニングHR>鈴木誠也がケガ離脱中に語っていた本音「”やれる”と思ったことは一度もない」「いくら失敗しても、僕は全然いい」
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byGetty Images
posted2022/07/07 17:00
7月4日、ランニングホームランで生還を果たす鈴木。離脱期間中、広島時代から取材していた筆者が本人に話を聞いていた
「変化球を待っていたんですけど、97マイルをセンターに打てた。そのとき、(上体を)開かない意識をすごくしたんです。詰まったけど、いい当たりで抜けた。それまで(の打ち方)ならもっと詰まった当たりになっていたと思う。今の段階では、あの感覚で打ちに行けばいいのかなと」
日本ではバットの角度などで飛ばせていたボールがメジャーではゴロとなり、ファウルとなる。その打開策が見えた気がした。意識したのは右肩。テークバックからの力感が緩むと、メジャー投手の強い球に対抗できない。ただ、テークバックから腰の回転で振り出す前に、意識的に上体を右腰の方へひねるような動きを加えることで右肩が投手方向に向くのを遅らせることができる。しっかりと距離をとった上で力感を緩めずにコンタクトすることでバットに力が伝わり、球威に負けない。手元で動く球種にも対応できるのだ。
故障による離脱期間も「時間がない」
「日本だと何となく真っすぐか変化球か分かりますけど、こっちは振りに行きながら見極めないといけない。右肩がポンッと出てしまったらダメ。振りに行きながらも、右肩が残っているから変化球にも対応できる」
十分な準備期間がないまま迎えたメジャー1年目にもがきながら現状の解決策を探り出した。バットを握れない日々も、その感覚を忘れまいと身体の使い方を徹底的にたたきこんでいた。
故障による離脱期間が延びた6月中旬、グラウンドとダグアウト裏を行き来しながら「時間がない」とトレーナーとともに組んだ復帰プランに奔走。メジャーに帯同しながらグラウンドで戦えない時間も、鈴木は戦っていた。
連続本塁打などブランクを埋めた復帰2試合での打撃に、離脱中の成果が感じられた。失敗を恐れない者がたぐり寄せた復活劇も、進化の過程にすぎない。
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