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中田英寿45歳は今の森保ジャパンをどう見ている? あのブラジル戦後の本音「意志を持った選手がいないとどうにもならない、限界がある」
text by
金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph byTsukuru Asada
posted2022/07/07 17:05
今年6月の日本対ブラジル戦後にインタビューに応えた中田英寿
考えろ、考えろ。
映画『ダイ・ハード』でブルース・ウィルスが演じるニューヨーク市警の刑事、ジョン・マクレーンは作中で何度も何度も自分にそう言い聞かせる。
なぜ彼は考えなければならなかったのか。別居中の妻が働く日系企業の本社ビルを訪れたことで、大規模な強奪事件に巻き込まれてしまったからだった。考えなければ妻や人質を助けることはできないし、そもそも、自分の命も危ない。それゆえ彼は、いつも以上の思考スピードを自らに強いたのだった。
ジョン・マクレーンはもちろん架空の人物である。妻に愛想をつかされた挙げ句、勤め先のナカトミ商事では旧姓を名乗られてしまう架空の人物である。偉人ではないし知の巨人でもない。
なぜ彼らは考えていないように見えたのか
だが、そんな冴えない中年男であっても、危機に瀕すれば考える。考えて考えて考え抜いて、何とかして危機から脱出しようとする。普段はあまり使っていない自分の頭にムチを入れ、新たな一手、先の一手を編み出そうとする。
なぜブラジルと戦う日本の選手たちは、Jリーグの社長たちは、考えていないように見えたのか。考えることによって活路を見出してきた人間に物足りなさを感じさせているのか。
考えなくても滅びないという前提に立っているから、ではないだろうか。
このままでは日本代表はワールドカップで全敗し、日本サッカーは未曾有の危機に陥る。ファン層の高齢化が進む一方のこのままでは、Jリーグは消滅する――。そう宣告されて何も考えない日本代表選手はいないし、Jリーグの社長もいない、とわたしは思う。
このままではいけない、何か手を打たなければという声が、アイディアが、そこかしこから噴出すると思う。思いたい。
誰もが中田英寿になれるはずがないし、川淵三郎になれるわけもない。だが、彼らの推進力になった発想の大枠は、彼らにならずとも、あるいはなれずとも獲得することができる。
わたしたちはいま、ナカトミ・プラザにいる。
そうイメージするだけでいい。
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