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中田英寿45歳は今の森保ジャパンをどう見ている? あのブラジル戦後の本音「意志を持った選手がいないとどうにもならない、限界がある」
posted2022/07/07 17:05
text by
金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph by
Tsukuru Asada
2人にインタビューをし、記事を執筆したのが90年代からNumberのサッカー特集に寄稿し続ける金子達仁だ。ベルマーレ平塚時代から取材を重ねる中田、面識はあるものの、意外にも初インタビューだという川淵。金子が感じ取った2人の言葉の共通点とは? そして彼らが日本人に求めるものとは?
考えろ、考えろ。
6月6日、国立競技場でブラジルと戦う日本代表の後輩を見ながら、中田英寿の胸中にあったのは、きっと、そんな思いだったのではないか。10数年ぶりになるNumber本誌でのインタビューを終えて、そんな気がしてきている。
長い付き合いでおぼろげながらわかってきたことがあるとすれば、彼は、物事を将棋のように考える、ということだ。
目的は何か。王を取ること。では、王を取るためにどうするべきか。目的から逆算して、手段を考える。言い方を変えれば、目的のない手段を嫌う。
一流とされる将棋の棋士は、100手先まで読むことが可能だという。彼らが指す一手一手には、すべて、目的につながる意味がある。
そんな人たちからすれば、素人の指す将棋は、「なぜ?」でしかないだろう。なぜそんな手を? なぜ考えない?
ゲームをコントロールしようとしている選手が少ない、とブラジル戦を見た中田は言った。分厚いオブラートにくるんだような表現だったが、要は、意図の感じられるプレーが少ない、意味のないプレーが多すぎる、ということだったのだろう。
「ボールが来たからこうします、じゃなくて、こうしたいからこうしますっていうのをやってる選手が、あの試合の日本に関しては、あまりいなかったと思う。もちろん個人の技術は大事。チームとしての戦術も大事。監督選びだって大事でしょう。でも、そもそも意志を持った選手、意志を持ったチームを作らない限り、作ろうとしない限り、どうにもならないというか、限界があるのがサッカーっていうスポーツだと思う」
極端かつありえないたとえをするならば、わたしの将棋を見た藤井聡太の気分に近いかもしれない。
川淵三郎vs.「知の巨人」
考えろ、考えろ。
日本サッカー界の後輩たちに対する川淵三郎の言葉も、ざっくりまとめてしまえばそういうことだった。