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「“高田明の娘”としてしか判断してもらえない。それが一番イヤでした」Jリーグ理事・高田春奈氏はなぜ東大博士課程で学びを続けるのか?
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTomosuke Imai
posted2022/06/25 11:00
今春からJリーグの常勤理事に就任した前V・ファーレン長崎社長の高田春奈氏。業務と平行して、東京大学で教育思想に関する研究を続けている
――国際基督教大学を卒業後、2001年にソニーに入社されました。同社を志望した理由は?
「“世の中の役に立つ”ことをとても重視している会社だと感じていたので、そこで働いてみたいと思いました。もちろん社会貢献や国際協力に関係した部署に憧れがありましたが、まずは自分がこの会社でやれるというのを示さないといけない。最初に配属されたのは人事部で、社員教育の仕事を担当していたのですが、それを今ではライフワークとして考えるようになっているのだから、つくづく縁だったなと感じています」
仕事と平行しながら東大で学びを続ける
――2005年にソニーを退社されて、株式会社ジャパネットソーシャルキャピタルを設立。代表取締役としての仕事が始まります。
「ソニーという大企業で4年半務めるなかで、会社における自分の影響力というものについて考えるようになってきました。ちょうど同時期に父の会社が大きくなり、人事のことで苦労していると聞いていました。なら、そちらで仕事をするほうが役立つことも多いだろうし、私自身もいろんな経験を積ませてもらえると思い、独立して会社を作りました」
――ジャパネットグループの人事や社員育成という部門を担ったわけですね。
「はい。でも、いざ社長になると決めた時に、私は人事のことしか知らない、経営についてわかっていない。だから勉強しようと思ったんです。MBAを取りたいとも思いましたが、仕事をしながら海外で取得するのは無理だよなぁ……と考えていたときに、東京大学の経済学部経営学科の学士入学制度があるのを知りました。それから2年間、同学部で経営を学びました」
――その後、今度は同大学の教育学部でも学び始めましたね。
「仕事として人材育成などに関わってきましたが、もう一度基礎から“教育”について学び直したいと思いました。これからの人生を考えたときに、教育を自分のライフワークにしたいと。そうしたら本当に面白くて」
――学士が修了すると、東京大学大学院教育学研究科修士課程を経て、現在は博士課程に在学中だとか。
「主に教育思想や教育哲学について学んでいます。そこでわかったのは、なんらかの能力を高めるためだけに教育があるのではなく、みんなが幸せになるため、よりよく生きるためにこそ教育は必要なんだということ。極論、『学校なんて必要ない』と論じる人もいるくらいですから。人間そのものの生き方を考えるような学問をずっとやりたいと思っていましたし、それはスポーツの世界にも繋がると感じているので、今も研究を続けています」