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「“高田明の娘”としてしか判断してもらえない。それが一番イヤでした」Jリーグ理事・高田春奈氏はなぜ東大博士課程で学びを続けるのか?
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTomosuke Imai
posted2022/06/25 11:00
今春からJリーグの常勤理事に就任した前V・ファーレン長崎社長の高田春奈氏。業務と平行して、東京大学で教育思想に関する研究を続けている
中学時代は西武の大ファン「先発ローテも覚えてます」
――スポーツビジネスの世界において、人事としてのご経験が活きている部分はありますか?
「経理が好きな人は、『お金の計算がカチッと合うのが気持ちいい』と言いますよね。でも人間の場合は、本当に思い通りにならない(笑)。自分自身も含めてですが、理屈通りには動かないから大変なことも多いです。でも、ある部署では仕事がうまくできない人が、違う部署へ行くと、生き生きと働けるようになることもあります。少しだけ足りないものがあり、それを学ぶだけで、一気に成長することもある。人と人との組み合わせでパフォーマンスが上がることも多々ありますし、計算通りじゃないからこそ大きな可能性が秘められていると思うんです。それはスポーツも同じでしょう」
――特にサッカーは1+1が2ではなく、3にも5にもできるスポーツだと言われますものね。
「おっしゃる通りですね。人事の仕事について私が思うのは、働く人の人生を背負うものだということ。対話をしてみて初めて、家族や健康になんらかの課題を抱えていることがわかることもある。『会社の役に立つ・立たない』を評価するだけでなく、そうやって一人ひとりに寄り添えるポジションなんですよ、本当は」
――それもスポーツにおけるマネジメントと共通する部分かもしれません。高田さんとスポーツというのはどういう関係性があったのですか?
「中高とバドミントンをやってはいましたが、競技者というよりも、見ているほうが楽しいなというのは当時からあったんです。中学時代は野球やバレーボールがすごく好きで、特に西武ライオンズの大ファンでした。森祇晶監督の黄金時代ですね。新聞記事を切り抜いてノートに貼ったり(笑)。秋山幸二さん、清原和博さん、デストラーデ……。打順はもちろん、ピッチャーの先発ローテーションまで覚えているくらいです(笑)。あと、オリンピックがすごく好きで、シドニー以降は現地にも何度か見に行っています」