核心にシュートを!BACK NUMBER
「苦しいことばかりで…」決勝で負け続け“辞任も考えた”宇都宮ブレックス・安斎HCがBリーグの頂点に立つまで《優勝記念インタビュー》
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJIJI PRESS
posted2022/06/06 17:00
優勝を決め、比江島慎の肩を抱く安斎竜三HC
CSを支えた鵤の大活躍
今回、鵤は日本生命ファイナル賞を手にした。
昨シーズンからスタメンのPG(ポイントガード)に定着して安定したパフォーマンスを披露してきた鵤は、CSでは攻守のキーマンとして輝き、ファイナルズでの大活躍があった。
ブレックスでは以前、守備のスペシャリストである遠藤祐亮がレギュラーシーズンのベストファイブに選ばれたことがある。前回Bリーグを制したときには、遠藤が相手のエースやキーマンを抑えるというのがブレックスの強みで、対戦相手は遠藤が誰をマークしてくるのかを考えながら作戦を練っていたほどだ。
ただ、今は違う。
スタメンのなかで遠藤と同じくらい質の高い守備を、鵤も見せるようになった。だから、相手のPGとエースの両方を上手に抑えることができる。そして、彼らがいるから、同時にコートに立つことの多いエース比江島が攻撃でも力を発揮しやすい環境がある。
5年前の優勝時と同じように、ブレックスは失点の少なさや守備効率がリーグナンバーワンだった。そんなチームだからこそ、守備力のある選手に光が当たるチャンスを作ったともいえる。
優勝後に語った決意「その負けを次に生かせるのか」
安斎は優勝した今だからこそ、こう話す。
「開幕2連敗から始まって苦しいことばかりでしたが、この旅は優勝という最高の形でゴールできました。今は勝ったことを喜ぶべきです。
でも、勝ち続ける人なんて1人もいません。この先、僕らにも負けるときは来ます。そのときに、どうなるか。一度でも勝った経験が意味を持つのか。その負けを次に生かせるのか。大事なのはそこだと考えているんです」
思えば、5年前に優勝した時にも、秋田ノーザンハピネッツを迎えたホームでの開幕戦で敗れている。
今シーズンも、ホームでの開幕戦で敗れ、頂点にたどりついた。
はたして、これは偶然の一致だろうか。
バスケでも、人生でも、負けることがある。それを知っているから、決勝戦で3度負けても立ち上がり、安斎に率いられたチームは頂点に立てたのだ。
ブレックスのカルチャーとして根付く、最後の瞬間まであきらめずに戦うマインドは「BREX MENTALITY」と表現される。それはブレックスの強さとなり、対戦する相手を苦しめてきた。
これからは、負けや失敗からも何かを学ぼうとするマインドもまた、宇都宮ブレックスの誇る勝者のメンタリティーの一つとして加わるのかもしれない。