核心にシュートを!BACK NUMBER
「苦しいことばかりで…」決勝で負け続け“辞任も考えた”宇都宮ブレックス・安斎HCがBリーグの頂点に立つまで《優勝記念インタビュー》
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJIJI PRESS
posted2022/06/06 17:00
優勝を決め、比江島慎の肩を抱く安斎竜三HC
ファイナルズ第1戦。第2クォーターで琉球が、海外出身の大型選手を3人同時に起用する「ビッグ・ラインナップ」を採用してきた。この時点でブレックスは3点のビハインドを負っていたのだが、琉球の布陣の弱点をつき、10連続得点などで一気に逆転した。そこにはレギュラーシーズンのGAME 2で「ビッグ・ラインナップ」に苦しんで敗れた経験が活かされていた。
ファイナルズ第2戦。試合終盤の残り38.9秒の時点でブレックスのリードはわずか4点で、琉球がエンドラインからのスローインのチャンスを得た場面があった。レギュラーシーズンのGAME 1では、残り0.9秒で似たような位置でのスローインから逆転シュートを決められ、涙を飲んでいた。だが、今回、あのとき自らの頭越しにシュートを決められる屈辱を味わったジョシュ・スコットが、相手スローインからのパスを見事に防いでみせた。
安斎は振り返る。
「選手もそうですけど、僕自身の采配も、今シーズンは失敗がとても多くて。ただ、その経験をしっかり次に活かせるようになって、チームはまとまっていきました。そして、最後は(チャンピオンシップMVPに輝いたエースの)比江島(慎)もああいうモードに入ってくれて、責任感がプレーに出たんです」
安斎がメンバー全員をコートに立たせる理由
安斎HCには、大切にしてきたチームルールがある。
レギュラーシーズンでは、短い時間であってもベンチ入りした選手を試合中に1度はコートに立たせるというものだ。最大の理由についてはこう説明している。
「試合に全く絡まないのに、『練習では頑張れ!』と言ったところで、正直厳しい部分があります。たとえ数十秒でも試合に出ていれば、『自分はチームから必要されている』と感じられると思うんです」
ただ、実はこんな理由もある。
「試合間隔が以前よりつまっているので怪我のリスクを回避するという意味も考えてのことでした」
バスケットボールはチームスポーツであるが、トップレベルでこの方針を貫くのは容易ではない。だから、それを貫いて昨シーズンのレギュラーシーズンで1位になったことを評価する声は内外からあがっていた。
「うちから誰もベストファイブに選ばれないというのは…」
ところが、安斎は選手たちに申し訳なく思うことがあった。昨シーズンの優秀選手5人を選ぶ「ベストファイブ」の顔触れを見たときだった。
「『あれだけ(*レギュラーシーズン1位)勝っても、うちのチームから誰もベストファイブに選ばれないというのは、なぜだろう』と正直、思っていました。点数を多くとる選手や目立つ選手しか評価されないというのは……。
ただ、それ以上に、僕がプレータイムをシェアする方針を立てているからそういう状況になっているのかもしれないと責任を感じることもあって。ジョシュ(今季チーム得点王のスコット)だって、もっと長い時間プレーすることはできるし、そうすれば得点ランキングでもさらに上に行くはずですから。
あれだけの活躍をしている (鵤)誠司にしても、なぜ、もっと評価してもらえないのかとずっと思っていました。誠司は今回の賞でやっとわかってもらえた面はありますが、それも優勝したからですし。派手さはないかもしれないけど、しっかりとした組織を作っているチームは他にもありますから。そういうところも評価されるバスケ界にしていかないと……」