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「ブラジル、練習モードで1-0」「ファン・現地紙が酷評」日本が“舐められた”33年前の初対戦と“中田英寿ラストゲーム”を現地で見た 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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posted2022/06/06 11:04

「ブラジル、練習モードで1-0」「ファン・現地紙が酷評」日本が“舐められた”33年前の初対戦と“中田英寿ラストゲーム”を現地で見た<Number Web> photograph by JMPA

ドイツW杯の日本vsブラジル。ブラジルから帰化した三都主アレサンドロもその強さを実感した

 それでも、テクニック、フィジカル、状況判断といった基本的な能力が日本選手とはまるで違う。一方的に試合を支配し、シュートを打ち続けた。

 ところが、集中力に欠けるためか、シュートがことごとく外れる。

 一方、日本は相手のミスでボールを手にしても3本とパスがつながらず、すぐまたボールを奪われる。得点どころか、シュートを放つことすらできない。

 それでも、ブラジルは再三のチャンスを名手ロマーリオ、カレッカ、ベベットらが外し続ける。GK森下申一(当時ヤマハ)の好守もあって、前半は0-0で終了。大量得点を期待していた観衆が一斉に立ち上がり、鬼の形相でブラジル選手に罵声を浴びせた。

試合を決めたのは、あのビスマルクだった

 後半、ブラジルは最終ラインの3人を除く8人を替えた。「勝つため」というよりは、多くの選手をピッチに立たせるための交代らしかった。

 前半同様、ブラジルが一方的に攻めながら得点できない時間帯が続いたが、ようやく20分、右からのクロスをMFビスマルク(後にヴェルディ川崎、鹿島アントラーズ)が頭で決めて先制する。

 その後も、ブラジルが再三の決定機を外し、日本はチャンスを作ることすらできない、という展開が続く。結局、そのまま試合が終わり、またしてもスタンドから凄まじいブーイングが起きた。

 スコアだけ見れば日本の善戦のようだが、内容は完敗。試合が終わった瞬間、「よくこれだけ一方的な内容で、0-1で済んだ」、「大敗しなくてよかった」と思う反面、両国の実力差がとてつもなく大きいことに愕然とした。

 翌日のリオのスポーツ紙の見出しは、「ブラジル、練習モードで日本を下す」。「やっぱり、誰が見てもそうだよな」と思ったものだ。

17年後にジーコジャパンがW杯でブラジルと対戦

 それから17年後の2006年6月22日、W杯ドイツ大会のグループステージ(GS)最終戦で、日本代表はドルトムントでブラジル代表と対戦した。スタンドは6万5000人の観衆で埋まった。

 ジーコ監督率いる日本は、国内では「史上最強」と言われて非常に期待されていた。しかし、GS最初のオーストラリア戦で中村俊輔の得点で先制しながら、終盤、3点を奪われて痛恨の逆転負け。2戦目はクロアチアとスコアレスドローで、GSを突破するにはブラジルに2点差以上で勝つ必要があった。

 一方、ブラジルは攻撃陣にロナウド、ロナウジーニョ、カカ、アドリアーノの“黄金のカルテット”を擁する優勝候補。クロアチアを1-0、オーストラリアを2-0で下しており、引き分け以上ならGS首位が確定する状況だった。

【次ページ】 三都主も「玉田のゴールでいける」と思ったんだけど

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