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日本とW杯で対戦、ドイツ代表候補がエグい…V10バイエルン勢と19歳のライジングスターも注目なワケ<識者が選ぶブンデスベスト11>
posted2022/06/09 17:00
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Getty Images
2021-22シーズンのドイツ・ブンデスリーガは、バイエルンが前人未到のリーガ10連覇を実現して幕を閉じた。ただ、ユリアン・ナーゲルスマン監督が満を持して就任した今季のバイエルンが盤石だったとは言い難い。とりわけ果敢なハイラインを築くなかでのディフェンスワークには課題が散見され、指揮官の理想とするチームスタイルへの順応に苦しんでいた選手も見受けられた。
シュベーベはビルドアップで多大な貢献
ブンデスリーガで守備力を発揮するには、DFのハイスキルが求められると感じている。端的に言えば、単純な対人能力だけでは曲者揃いの相手アタッカーを抑えきれない。また、バックラインの選手にはビルドアップ時の緻密な組み立ても求められている。
それはGKにも言えることで、最近のブンデスリーガGK陣は足元の技術に優れる選手が目立ち始めている。
今季のベストGKにはケルンのマルビン・シュベーベを推したい。ケルンは今季からステッフェン・バウムガルト監督を招聘し、「ポゼッション原理主義」と称されるほどのショートパスサッカーへのスタイル転換を図った。
シュベーベは当初セカンドGKの立場だったが、昨年の12月頃を境に守護神へとのし上がり、バウムガルト監督が志向する自陣からのビルドアップで多大な貢献を果たしつつ、俊敏なシュートストップでもチームを救ってきた。相手の激しい前線プレスを浴びても一切動じずショートパスを通す高潔な姿勢は、リーガ最終節、シュツットガルトのメルセデス・ベンツ・アレナでも際立っていた。残念ながらゲーム最終盤に遠藤航の決勝ダイビングヘッドを浴びて敗戦したが、地元専門誌『キッカー』は遠藤ではなくシュベーベをマン・オブ・ザ・マッチとし、最終節全体のベストプレーヤーにも挙げている。
ターのいるエリアにボールを入れるのは得策ではない
DFは3人の選手を挙げたい。
まず、ヨナタン・ターはスピードと強度を併せ持ったハイクオリティなCBだ。攻撃陣にタレントが揃うレバークーゼンはとかくチーム全体が前傾姿勢になりやすいが、どんなにハイラインを築いても最後尾にターが控えることでそのリスクを著しく軽減させている。俊敏なFWとの走力勝負、ターゲットマンとのフィジカル対決と、様々なシチュエーションに即時対応して相手を封殺できる個人能力は抜きん出ていて、レバークーゼン戦において、彼のいるエリアにボールを入れ込むのは得策ではないと痛感してしまう。