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「市場価値171億円に高騰」レアルが狙うMVPドリブラー、いぶし銀化した「右サイドの暴れん坊」って誰?〈識者が選ぶセリエAベスト11〉
posted2022/06/09 17:01
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Claudio Villa/Getty Images
21-22シーズンのセリエAは、11年ぶりに王座へ返り咲いたミランの優勝で幕を閉じた。
指導者キャリア23年、歴代6位の高齢56歳7カ月で初優勝を果たした苦労人監督ピオリに敬意を表して、彼の4-2-3-1で《イ・ミリオーリ・ウンディチ(ベスト11)》を選んでみた。
ミラン鉄壁の守備を作った新守護神とテオの攻撃性能
ミラン優勝の要因の一つは、鉄壁の守備にあった。
リーグ最少失点をナポリと分け合った守備陣のうち、今季から正守護神となったGKメニャンの果たした功績は大きい。出場32試合にしてクリーンシートはリーグ最多の17回、シュートセーブ率も5大リーグの同僚たちの間で最高の81.3%を記録。縦横への跳躍力とバレーボール選手を思わせる腕の使い方にセーブ技術の新潮流がある。カリアリ戦で人種差別の野次を受けたが、気丈に対応したメンタルもたくましい。前任者ドンナルンマ(現パリSG)を懐かしむミラニスタはもはや皆無だろう。
4バックの左は、ずば抜けた攻撃力を見せつけたテオ・エルナンデス(ミラン)で決まりだ。
前方のFWラファエウ・レオンと組む縦の高速ドリブル・ホットラインは、守備側にとって脅威そのもの。加入3年目のテオは5ゴール5アシストで大車輪の働きぶりを見せ、特に37節アタランタ戦でのスーパーゴールは圧巻だった。自陣から一気に93mドリブル長駆!
「スタートしたときに最後の最後までいってやろうと思った。人生最高のゴールだ」と本人感激の一撃は、96年にサン・シーロで怪人OBウェアが決めた伝説のドリブルゴールを彷彿とさせた。守備面でも快足を活かしつつ無用なファウルが減り、対人テクニックが向上。デュエル勝利数が201回を数え、今や最終ラインの頼れる存在だ。
左CBには、高い完成度を見せた同僚トモリを推す。
百戦錬磨のキアルや主将ロマニョーリの控えから脱却し、デュエルの勝率やボール奪取数、パス成功率等で際立つ数字を残しながら優れた統率力をもってミランの防衛ラインを堅守した。ともに大きく飛躍した若き同僚カルルと阿吽の呼吸で、相手の攻撃の芽を黙々と潰す様は職人の域に近い。
カルチョ最強DFと“掘り出し物”はプロビンチャ勢にいる
ミラン組3連発の後は、プロビンチャ勢の出番だ。