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日本とW杯で対戦、ドイツ代表候補がエグい…V10バイエルン勢と19歳のライジングスターも注目なワケ<識者が選ぶブンデスベスト11>
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2022/06/09 17:00
今季も圧倒的な強さを示したバイエルンが前人未到の10連覇を達成。レバンドフスキらが違いを見せつけた
逆サイドはウイングプレーヤーが群雄割拠している。バイエルンのセルジュ・ニャブリは当然ベストプレーヤー候補のひとりだが、ここではボルシアMGの核弾頭、ヨナス・ホフマンを挙げたい。ホフマンのプレーの真骨頂は、凄まじい馬力での敵陣侵入と強烈な右足シュート能力で、味方FWを差し置いて今季チーム最多のリーグ12ゴールをマークした。逆にアシストは5に留まるため、ホフマンはサイドアタッカーと言うよりもフィニッシュワークに優れる選手だとも言える。
キミッヒがボールを持つと時が止まる
アンカーポジションには“盟主”バイエルンの頭脳、ヨシュア・キミッヒを据えたい。ジョゼップ・グアルディオラ監督の時代から変わらずバイエルンの中軸を担い、スペースカバー、パスワーク、対人と、「ゼクサー」(ドイツ語で背番号6。守備的MFの意として捉えられる)の職務を十全に全うするブンデスリーガ屈指のMFだ。
スピーディに攻守が入れ替わりがちなブンデスリーガのゲームで、キミッヒがボールを保持したときだけは良い意味で時が止まったかのようになる。その絶妙なアクセントは、チーム戦術を活性化させるきっかけにもなる。またキミッヒはスーパーユーティリティとしても高い評価を得ていて、ドイツ代表の右サイドバック不在が顕在化した際は彼がこのポジションを担う可能性もある。
インサイドハーフは新旧の競演。トーマス・ミュラーは言わずと知れたバイエルンの中核で、30歳を過ぎ、指揮権がハンジ・フリックからナーゲルスマンに移譲されてもその立場を保持し続けている。
彼のすごみは20代の頃と変わらない落ち着きと挙動で、それほどスピーディと思えないアクションからでも狭小のペナルティボックス内で確実にゴールを射抜くところにある。むしろ若い頃の方がベテラン的な振る舞いが目立った印象もあり、現在の方がスムーズさが増しているとも思える。
ビルツは常に俯瞰してピッチを見渡せる
フロリアン・ビルツは、ドリブル、パス、トラップの基本技術をハイレベルで有する、ドイツサッカー界期待のライジングスターだ。2年前に彼のプレーを観てスターティングメンバーのリストを見返したとき、まだ17歳だったのを知って驚いたのをよく覚えている。ビルツは常に俯瞰してピッチを見渡せる選手であり、その能力を駆使して常にその場面での最適解を導き出せる。
味方FWを活かすか、それとも自身が躍り出るか、その取捨選択を一瞬で下せるMFで、誰もが彼を“タクティシャン”として認識するだろう。残念ながら今年3月のケルン戦で左膝前十字靭帯断裂を負って長期離脱となってしまったが、順調に回復すれば19歳にしてカタール・ワールドカップのドイツ代表メンバーに名を連ねても、おかしくない。日本にとっても危険な選手である。