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「トミヤスは最大のサプライズ」英メディア絶賛も… 冨安健洋がアーセナル1年目を「まだまだ」「満足できない」と話した理由〈現地取材〉
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byVisionhaus/Getty Images
posted2022/05/31 11:02
負傷離脱期間が長引いたのは惜しかった。とはいえ、冨安健洋がアーセナルで見せたプレーのクオリティは非常に上質だった
「攻撃の部分で、もうちょっと貢献できるところもあると思います。ボールを持った時のところというのは、まだまだ課題が残っているかなと。(記者:守備では自信になったところはあるか?) 右サイドバックをやっていて、相手のウィングを止めることが僕の仕事です。まずはそこが第一と思っています。守備を含めて、アーセナルというクラブでプレーしている以上、まだまだ自分自身求めていくところがあるかなと思います」
冨安を取材していて常々感じるのは、自身への評価が非常に厳しいことだ。
最終節後、何度も口にしていたのが「まだまだ」という言葉。英サッカーサイト、フットボール・ロンドンにも「冨安は今季で最も効果的な補強だった」と評価されているが、本人は現状にまったく満足していない様子だった。
高評価の試合でも「はっきり言って満足できない」
5月1日のウェストハム戦でも似たような印象を抱いた。
対峙したアルジェリア代表FWサイード・ベンラーマのドリブル突破をうまく抑え、フットボール・ロンドンと地元紙ロンドン・イブニング・スタンダードから、チーム2位タイとなる「7点」の高評価が与えられた。
しかし、足の痙攣で後半33分に交代したせいか、本人は「はっきり言って満足できるものではなかった。シンプルにミスが多かったです。ボールを奪った後に、(自分が)またすぐに失ってとなると、僕らが求めているサッカーではない」と、反省の言葉を口にした。故障明けながら随所に好プレーを見せていたが、自身には厳しい眼差しを向けていた。
裏を返せば、冨安のこうした妥協を許さない姿勢が、アビスパ福岡からベルギーのシント・トロイデン、さらにイタリアのボローニャを経て、世界最高峰のプレミアリーグまで辿り着いた理由でもあるのだろう。現状に満足はせず、常に高みを目指す。こうしたストイックさが、今の冨安を形作っている。
ソン・フンミン、マネらと対決した貴重な経験値
今一度シーズンを振り返ると、さまざまなドラマがあった。
ラヒーム・スターリング(マンチェスター・C)、ソン・フンミン(トッテナム)、サディオ・マネ(リバプール)、ジェイドン・サンチョ(マンチェスター・U)といった世界トップの選手たちとしのぎを削った。
相手の執拗なロングボール攻撃で試合後に疲れて座り込んだバーンリー戦(9月18日)、ガブリエウ・マルチネッリへの柔らかいクロスボールで初アシストを記録したニューカッスル戦(11月27日)、急遽左サイドバックとして出場したリーズ戦(5月8日)と、印象に残る試合も多かった。