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「本当はな、大空スバル式羊殺しはやりたくなかった」“イロモノ扱い”されたグレート-O-カーンが“愚民の掌返し”を確信していたワケ 

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原壮史

原壮史Masashi Hara

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photograph byMasashi Hara

posted2022/04/30 17:03

「本当はな、大空スバル式羊殺しはやりたくなかった」“イロモノ扱い”されたグレート-O-カーンが“愚民の掌返し”を確信していたワケ<Number Web> photograph by Masashi Hara

「リングには外のものをあまり持ち込みたくない」と語るグレート-O-カーン。女児を救出した一件も「プロレスとは関係ない」と割り切っている

「天変地異に天変地異が続いて負け続けた時もあったし、『プロレスは嫌いだ』と宣言したり、プロレスよりアニメの話ばかりしていたしな。世間に見る目がないやつが多いことは最初から気づいておった。だから余は、愚民と帝国民を分けておるのだ。見る目の無い愚民どもに掌を返させてやる。それをずっと楽しみにしておった」

 今回の一件がなくても、オーカーンには世間の見方をひっくり返す自信があった。

「昨年のG1からずっと言っておろう。『始める前は否定される。始めれば反感を持たれる。途中でやめれば馬鹿にされる。報われるには、報われるまで続けるしかない』と。だからな、続けるしかないんだよ。あの事件は、自分を貫いてきた中で、たまたまプロレスとは関係のないところで起こったこと。誇るべきことではなく、ただのきっかけに過ぎん。それよりも、両国でちゃんとチャンピオンになったことの方が、世間の目を変えさせるには相応しかったじゃろうが。あの事件があってもなくても、余がやることは何も変わらない。だから今の世間の“どこぞの記者”ばりの掌返しは、いずれにせよいつかは起こることだったのじゃ」

 好きなものを好きと言い続け、一切ブレなかった。世間にすり寄るのではなく、自分を貫き通してきた。結果、周りの見る目は変わった。

“帝国書記官のおしごと”を認める器の大きさがスゴい

 とはいえ、実際にそこまでやり続けるというのは決して簡単なことではない。イギリス時代から、あるいは「記憶を失う」以前から、オーカーンの姿勢は何も変わっていない。他のレスラーが歩まないオリジナルな道を歩み続けることができるのはなぜなのだろうか。

 今回の事件やタッグ王座の戴冠で一気に掌を返された印象が強いが、その前にも周囲の見る目を変えさせた好例があった。そのひとつが、“帝国書記官”こと東京スポーツの岡本祐介記者による記事だ。オーカーンが勝てば大絶賛、負ければとことん酷評する独特な試合レポートは、徐々にファンの心をつかんでいった。

「あれも、最初はバッシングが凄かった。乗っかってきて馬鹿にしてくるやつも、持ち上げられた時に『なんでこいつがそんなに褒められるんだ』と言うやつもいた。選手の間でも不評だった。でもな、余はニヤニヤしてそういうやつらを見ていたよ。センスのねぇやつらだ、小さなプライドに凝り固まっている、プロレスファン心の抜けねぇ愚レスラーどもだ、とな」

 いまや、帝国書記官によるオーカーンの記事は東スポの新たな名物となった。現在、プロレス関係で最も読まれているコンテンツかもしれない。

「つい最近、『あれをマネしたい』っていう記者が現れたんだよ。でもな、実際にああいう記事を書かせてくれる選手がいないらしい。当たり前だ。余のような器の大きさと先見の明があるものはおらんのだからな。ま、あれも、余が成功させてやった、と言っても過言ではないんじゃないか?」

【次ページ】 世間の反応も「すべて余の掌の上じゃ」

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