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「国内最高額の賞金総額600万円!」ベストセラー作家・東野圭吾はなぜスノボの大会を“自腹で”開くのか?
text by
秋月透馬(文藝春秋)Toma Akizuki
photograph byShigeki Yamamoto/“tochi” sato
posted2022/05/07 17:03
ベストセラー作家・東野圭吾氏が発起人の大会『スノーボードマスターズ(SBM)』。3年ぶりとなった今大会には、北京五輪女子ハーフパイプ銅メダリストの冨田せな、同5位の冨田るき(写真)などハイレベルな選手が集まった
「スノーボードを始めた頃は、ハーフパイプだけじゃなくて、スロープスタイルなど、いろんな競技をやっていたんです。ところがオリンピックを目指すようになって、ハーフパイプだけに特化して練習し、世界を転戦するようになり、他競技の選手との交流がなくなっていたんですね。今回のSBMで、別の競技をしているライダーの滑りを見て、『えっ、そんな技術があるの?』という発見も多かったですし、自分のスタイルを広げるうえで、刺激的なヒントをもらうことができました」
女子優勝の冨田るき「20歳になったので、初参加できて…」
2日目はバンクドスラローム。コースサイドで東野氏が見つめる中、選手たちは2本のタイムトライアルに挑んだ。
初日と2日目のポイントを総合した結果、女子の部の優勝は、北京オリンピック5位の冨田るき。初日3位からの逆転勝利となった。2位には覚張美咲、3位には黒木あかりがはいった。
東野氏のサイン入り優勝記念ボードを手にした冨田るきは、満面の笑みで話してくれた。
「私も姉も地元が妙高市で、ずっとSBMに出たいと思っていました。20歳になったので、ようやく初参加できたと思ったら、まさか優勝できるなんて! 初日のフリーライド&ジャンプを見ていると、私より上手い選手しかいなかった。テクニカル選手権やスノーボードクロスの選手たちと交流する中で、勉強になることばかりでした」
男子の部の優勝は、第1回大会から連続出場していた元木康平。バンクドスラロームで好タイムをたたき出し、悲願の優勝をつかんだ。
「これまでバンクドスラロームだけの大会では結果を残せても、フリーライド&ジャンプが苦手で、SBMでは勝てなかった。フリーライドでも、自分の武器である『減速をしないターン』をジャッジに見てもらおうと思って、『究極のターン』を目指しました。それが評価されて初日で3位になることができたことが勝因だと思います。総合力が問われる大会で勝てたことが嬉しい!」と語る。
東野氏が選手たちに語りかけたこと
3年前――。「X GAMES」で優勝経験がある角野友基さんは、オリンピックを目指している10代の選手たちに向けて、こんなメッセージを語ってくれていた。