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「実技でバレエやヒップホップも教えています」町田樹32歳に聞く“なぜ大学の研究者に?”「動機の1つは女性選手の健康問題でした」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2022/04/15 11:01
ソチ五輪5入賞、世界選手権銀メダル獲得など輝かしい成績を残した元フィギュアスケーターの町田樹。32歳になった町田のもとを訪ねた
北京五輪が閉幕して約1カ月。町田は地上波のテレビで解説員を務めるなど、期間中もフィギュアスケートを注視していた。その上で、「よくも悪くも、注目を集めたのがフィギュアスケートなのではないかと思います」と語る。
日本にとっては各部門で嬉しいニュースが多かった。団体戦で日本は銅メダル(暫定の成績)を獲得し、この部門が採用されて3度目の大会で初めて表彰台に上がった。
「団体戦も素晴らしかったですね。メダルを獲得できたことは、歴史的快挙と言えます。しかもどのカテゴリーの選手もほぼノーミスの演技でバトンをつないでいった。私はあまり感動という言葉は好きではないので使いたくないのですけれども、その華麗なるバトンワークには心から感動しました」
さらには個人戦、カップル競技の健闘も称えた。
「坂本花織選手が3位を獲得されたというのは大きなことだったと思います。ともすれば男子よりも熾烈な4回転ジャンプの争いが女子シングルのトップ陣では繰り広げられていますけれど、トリプルアクセルも4回転ジャンプも実施していない坂本選手がロシアの牙城に肉薄してメダルを獲得したのは、若き女子スケーターにとっては希望になるのではないか、と思います。
カップル競技も日本の選手はしっかりレベルアップしていて、競技の知名度もより上がってきたのではないかと嬉しく思いました。とりわけ三浦璃来・木原龍一組は、フリーだけ見れば5位だったんですね。しっかりと自分の潜在能力をいかんなく発揮すれば、世界トップ5に入れるのを証明した。日本のカップル競技が大きく進化しているのを国内外にしっかりアピールできた大会になったのではないでしょうか」
「難しい問題ですね」フィギュア界が抱える深刻な現状
「よくも悪くも」――。北京五輪ではカミラ・ワリエワ(ROC)のドーピング違反が大会を揺るがした。ワリエワが15歳であることから「16歳未満を要保護者」とする観点も踏まえ、そのまま出場が認められたが、近年の女子部門で議題にされてきたトップ選手の若年化によるシニア昇格年齢の引き上げ問題をあらためてクローズアップすることになった。
「難しい問題ですね」と、町田は悩むような表情を見せた。マネジメントの研究者として日々を過ごす今、現在のフィギュアスケート界が抱える問題とどう向き合い、解決策を模索しているのか――。
撮影=榎本麻美
〈#3に続く〉