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「実技でバレエやヒップホップも教えています」町田樹32歳に聞く“なぜ大学の研究者に?”「動機の1つは女性選手の健康問題でした」
posted2022/04/15 11:01
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
フィギュアスケート界で燦然と輝き、2014年に引退した町田樹は現在、國學院大学の助教として研究にあたり、学生の指導も行なっている。
「これは多くの方がいまなお間違えられる点なので、ぜひとも気をつけてほしいのですが、私は『助教』であって、『助教授』ではありません。『助教』のあとに1つ『授』という言葉を付け加えると、実は私は昇格してしまいます(笑)。今は助教授という言葉はなく、准教授という言葉に変わっているんです。助教は准教授の下ですが、助手とは異なり、教員としての仕事をしています」
大学では講義を受け持ち、またゼミも持ってゼミ生の指導にあたっていると言う。
「ゼミは学部の3、4年生が所属しています。定員が10名なので、合計20名です。今年も10人に卒論を書かせて卒業させます」
町田のもとにはどのような学生が集まってくるのだろうか。
「私が所属するのは人間開発学部健康体育学科です。ともすれば分かりにくいネーミングかもしれませんが、要は主に『教育』について探究する学部で、その中にあるスポーツや体育に関わる学科に私は所属しています。私が専門とするスポーツ科学はユニークで幅広い分野です。スポーツ科学と一口に言っても、例えば、スポーツ社会学、スポーツ法学、スポーツ経済学などの、あらゆる分野が含まれています。そういう意味でスポーツ科学は、『学際』領域と言われています。ですから、元来健康体育学科にはいろいろな興味関心を抱いている学生が多いのですが、私のゼミには、主にスポーツ社会学系の問題意識をもった学生が集まってきます」
生徒との交流「研究指導を行って、すぐに解散です…」
大学と言えば、新型コロナウイルス感染拡大による授業への影響がしばしばクローズアップされた。町田の在籍する大学では、早くから感染対策を徹底して対面授業を再開させてきたというが、それでも現場はコロナの影響を受け続けている。
「やはり密な対話というのは極力避けていますから、必要最低限の指導になってしまっています。ゼミを開講しても、研究指導を行って、それで解散です。もう一歩ゼミ生と関係を深めるための懇親会などは一切実施していないので、そういう意味では残念なことに学生と一定の距離感はあるかもしれないです。一刻も早くコロナ禍が過ぎ去って、学生とも密に交流していきたいと思いますね」
残念そうに言う。裏返せば、コロナ禍の前の学生たちとの交流ぶりがそこにうかがえるし、町田の面倒見のよさも垣間見えるようだった。