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高卒→ドイツ移籍…18歳DFチェイス・アンリのアドバンテージとは? 日本語を話せなかった少年が6年間で遂げた成長
posted2022/04/15 11:04
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
4月8日、尚志高校を卒業したばかりのチェイス・アンリが、ドイツ・ブンデスリーガのシュツットガルトとプロ契約することを発表した。
アメリカ人の父と日本人の母を持つアンリは、187cmの高さに加えてスピードや対人の強さが売りのセンターバックだ。高い精度のキックを駆使したビルドアップ能力も持ち合わせており、将来の日本代表の1人として期待されている。
実際、昨年には高3ながらU-22日本代表としてAFC U-23アジアカップ予選に出場。今年1月にはA代表のトレーニングパートナーとして合宿に帯同し、3月にはパリ五輪を目指すU-21日本代表の一員としてドバイカップにも出場した。この経歴にして、つい先日、18歳になったというのだから、その才能に驚くばかりだ(2004年3月24日生まれ)。
当然、J1の多くのクラブからオファーが殺到した。だが、かねてから海外でのプレーを希望していたアンリは、シュツットガルトの他にも、オランダ1部のAZアルクマールなどの練習に参加。夏のインターハイ後からその道を模索してきた。
「父親はアフリカにルーツがあります。それを受け継いだ身体能力もあるし、日本の文化や考え方は母が教えてくれました。自分が日本の中でもかなりユニークなプレーヤーであることは自覚しています。“オンリーワン”だと思っているからこそ、早く海外で挑戦したいと思っていました」
若くして海外に渡ることのリスク
この決断には賛否両論があるだろう。海外移籍において、まず日本人選手にとって大きな壁となるのが言語だ。島国である日本とは異なり、欧州ではさまざまな国にルーツを持つ選手が揃い、多数の言語が入り乱れる環境にある。さらにフィジカル面でも大きく差のある選手たちと対峙しなければならない。それが高校を卒業したばかりの選手とあれば、一層のリスクを伴う。
現に欧州のトップリーグで活躍する日本人選手を見ると、そのほとんどがJリーグで数年間キャリアを積んでいることがわかる。10代で海外へ渡った堂安律や冨安健洋にしても、彼らはすでに高校年代でJデビューを飾っており、Jリーグでのキャリアによって海外クラブからラブコールをもらった。以前より移籍の若年化は進んでいるとはいえ、将来を見据えた語学習得を含め、計画的なステップアップが成功には欠かせないと考えるのが一般的だ。
しかし、アンリの場合は彼らとは異なるアドバンテージがある。
それを知るためには彼のバックグラウンドを知る必要がある。