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高卒→ドイツ移籍…18歳DFチェイス・アンリのアドバンテージとは? 日本語を話せなかった少年が6年間で遂げた成長 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakahito Ando

posted2022/04/15 11:04

高卒→ドイツ移籍…18歳DFチェイス・アンリのアドバンテージとは? 日本語を話せなかった少年が6年間で遂げた成長<Number Web> photograph by Takahito Ando

ブンデスリーガのシュツットガルトへの加入を発表したDFチェイス・アンリ。尚志高校での会見に出席し、まずはU-21チームでのプレーとなることを報告した

「アメリカは個人主義で、どちらかと言うと『Life is freedom』。それもいいと思うのですが、自分勝手すぎるところもあります。でも、日本は学校の制服がみんな一緒だったり、組織として動くときにちゃんと秩序がある。その方がやりやすいと感じることもあるんです。そういう意味では僕はアメリカの文化も持っていますが、日本人的な要素も強いと思っています」

 日本での成長とアメリカで養った下地の“ダブルスタンダード”は、ドイツという異国の地でも生かされることだろう。昨年、ドイツやオランダに渡ったとき、アンリはこんなことを感じたという。

「アメリカにもスペイン系、アフリカ系、メキシコ系と様々な国にルーツを持つ人が多くいた。いろんな人種が存在していて、それぞれの言葉を話している。それが当たり前。自分は英語が出来るので、どの人種の人たちとも会話できる。ドイツやオランダに行ってもいろんな人種の人たちがいるし、ノリや文化もアメリカに近いものがあったので、『海外に来た』という感覚は全くなかった」

衝撃的だったアンリの決勝ゴール

 ただ、プロはアンリにとって未知の世界であることは言うまでもない。センターバックというポジションとしても「勝敗を背負う責任」も増す。しかし、これまでの成長の軌跡の中で、責任感の強さを感じ取れるシーンに何度も出会ってきた。

 筆者が最も驚かされたのが、DFリーダーとなった高校3年の“最後の選手権出場”を懸けた福島県予選決勝で見せた衝撃的なプレーだった。

 1−1で迎えた後半アディショナルタイム。アンリは自陣の守備で気迫のプレーを見せると、大きなクリアボールと共に「自然と体が動いた」と相手ゴールに向かって猛然とダッシュ。試合終了間際の80mの高速ロングスプリントの末、味方からラストパスを受けて渾身の左足のシュートを放った。それが、チームを選手権に導く劇的な決勝弾となったのだ。

「昨年(2020年)の選手権予選準決勝で自分がシュートを決め切れずに負けてしまって全国に出られなかった。当時の3年生に申し訳ない気持ちがあった。だからこそ、80分間で勝ち切りたい、このまま終わってしまいたくないと強く思って、あの瞬間に『俺が決めなきゃ』と気付いたら全力スプリントをしていました」

 仲間のために、チームのために最後までハードワークをし続けるメンタリティーと試合を決定づける力。それを持ち合わせていることを証明した瞬間だった。

【次ページ】 「18歳の年代では1番上」

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