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《練習は200〜300投、トミー・ジョン手術が必要な選手も》あなたが知らない競技「水切り」…日本人世界王者30歳が明かす意外と過酷な話
text by
齋藤裕(Number編集部)Yu Saito
photograph byYu Saito
posted2022/04/10 11:00
国内屈指、いや世界屈指の水切りの強豪となった橋本さん。ホームグラウンドたる栃木県小山市の思川にて
――川じゃないんですね。
「でも川に行くのは好きでした。用がない時とか、魚を見に行ったりが好きで、野球が好きで、投げるのも好きだったから、まあ(水切りを)やりますよね。それで「こんなに綺麗に石が飛び跳ねていくか」と感動したのが、大学1年のとき、場所は広瀬川でした。今思えば、広瀬川には、関東にはない凝灰岩があったんです。この石は軽くて形もよく跳ねやすい。だから、とても初心者向きの環境だったんです」
――そして大会に?
「調べたら地方大会はなく、全国大会しかない。しかも住んでいた宮城に全日本石投げ選手権大会(宮城県丸森町)があって、「さぞかし上手い人がいるだろう」と思って大学3年の時に参加したんです。ルールは1対1のトーナメント形式で審判が3人いて、目視で回数を記録し、多かったほうが勝利という形になります。そこで結局、大会新記録の18回というのを出して優勝してしまったんです」
私がチャンピオンになっちゃいけない
――いきなり初優勝ですか。
「そこで『あれ、これおかしいな』と(思った)。私が適当にやってるぐらいで、全日本チャンピオンになっちゃいけないんですよ。上手い人はまた別にいるはずだと思い、別の大会に参加しました」
そして、5〜6人のリーグ戦による勝ち上がり形式で優勝を争う「天塩川de水切り大会」(北海道中川町)に出場し、チャンピオンに。
距離と回数、美しさを審判によりジャッジされ、総合力が求められる「仁淀川国際水切り大会」(高知県吾川郡)にも参戦し、優勝を果たす。
「これで国内の三大大会を制したことになりました。北海道の大会は優勝賞金3万円が出るので旅費を掴み取るという気持ちで参加したら、地元の人が50〜60人くらい集まる大会で。『いきなり本州からとんでもないのがやってきた』みたいな雰囲気になってしまいました(笑)。複数の大会に出る人なんて初めてだったみたいです。高知は優勝しましたが、岡坂有矢くんはダントツでやべえと思いましたね」