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《練習は200〜300投、トミー・ジョン手術が必要な選手も》あなたが知らない競技「水切り」…日本人世界王者30歳が明かす意外と過酷な話
text by
齋藤裕(Number編集部)Yu Saito
photograph byYu Saito
posted2022/04/10 11:00
国内屈指、いや世界屈指の水切りの強豪となった橋本さん。ホームグラウンドたる栃木県小山市の思川にて
――岡坂さんはどんな選手なんでしょうか?
「目に見えて違う軌道を描いて投げているんです。投げ方からしてかなり違いますね。腕のしなりが全然違う。もう肘がギュワンみたいな感じで。野球だったら、絶対肘ぶっ壊すぞみたいな。それですごい回転の石がプーンと勢いよくいくんで。あれで水切り観が変わりましたね。彼とは一緒に水切りにも行ったりする仲です。私が出られなかった世界大会で岡坂くんは肘を痛め、トミー・ジョン手術が必要と医師から診断されるレベルのケガを負った。それでも利き腕とは逆の左手で投げたり、痛みをおして出場した北海道の大会では投げられる回数に制限があるはずの中、決勝に右手の力を温存していたりとすごい選手です」
――それで国内の水切りをすべて見たような?
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「あとは大学を卒業して修士1年の夏には、熊谷水きり倶楽部(埼玉県の荒川を拠点)の森川寛さんに会いに行きました。水切り界の先人、レジェンドのような方で、本当にいろんなことを教わり、違う理論を持った人がいるんだなと発見がありました」
初めての世界大会
――そういった出会いを経て、海外を目指されたんですか?
「修士2年(2015年)の7月4日、アメリカの独立記念日にミシガン州マキノー島で行われる世界大会に参加するため、初めて渡米しました。石の持ち込み可だったので、日本から30個くらい石を持っていきました」
――マキノー島の大会は参加資格とかあるのでしょうか?
「特に連絡を取るとかはなく、参加登録は現地で、当日に済ませる形でした。日本の時同様、前日入りして石と水面の状態を確認してました。島は観光地で、参加者には日本からの旅行客もいましたね。訳も分からず飛び入り参加していた家族連れのお父さんからは『何の大会なんですかね?』と聞かれ、『これは水切りの大会で、私はこの大会のために来たんですよ』と教えたりしました。
ルールは6回投げて、跳ねた回数が多かった人の勝ち。シンプルだと思います。投てき競技って本来そういうものだと思いますし、日本が特殊なんですよね」