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「本当に似ている」ヤクルト村上宗隆の弟・慶太(兄より大きい190cm)が見せた3つの非凡な能力とは? 同じ九州学院、熊本制覇に貢献
text by
西尾典文Norifumi Nishio
photograph byPPAB-lab.
posted2022/04/06 11:03
ヤクルト村上宗隆を兄にもつ九州学院・村上慶太(新3年)。春の熊本大会には多くのスカウトが集結した
そのスイングが“並”ではないことを証明したのが第1打席。
1ボール、1ストライクから投じられた外角のチェンジアップにタイミングを外され、泳がされるようにして打った打球はライトフライとなった。だが、その滞空時間を手元のストップウォッチで測ると「6.33秒」を記録したのである。
高校生の場合、外野フライで6秒を超えることは非常に珍しく、しかもこの時の慶太のスイングは体勢を崩されていた。
それを踏まえると、いかにヘッドスピードが速いかがよく分かる。フライを受けた秀岳館のライトの選手が、落下点に入ってからかなり待たされたことで、捕球の後に少しふらついていたのも印象的だった。トップの形が少し不安定で、ステップする時に体が残し切れていない点などは課題だが、そのあたりが解消されれば持ち味のパワーはさらに生きてくるだろう。
スラッガータイプなのに脚も速い?
次に驚かされたのが、その脚力だ。4回裏の第2打席はノーアウト一塁の場面。結果は併殺崩れのセカンドゴロとなったが、この時の一塁到達タイムは「4.38秒」をマークしている。
俊足の左打者であれば4.0秒前後で駆け抜けることが多いが、慶太のようなスラッガータイプの選手は5秒近くかかることも珍しくない。190cm、94kgという体格もあって出足の加速はそれほどでもないが、トップスピードに乗ってからの速さは見るべきものがあった。第3打席の走者がいない場面でのセカンドゴロでも「4.42秒」を記録しており、足を緩めずに走る姿勢は良い意味でスラッガーらしくない長所と言えるだろう。
もうひとつ目立ったのがチームに貢献するプレーである。1点を追う8回裏に迎えた第4打席は、1アウト一塁というホームランが出れば逆転という場面。ここで慶太は相手バッテリーの誘う変化球をしっかり見極めて四球を選び、その後の逆転劇に繋げたのだ。守備や自身が打席に入っていない時の攻撃でも盛んに声を出し、また攻撃中にベンチの近くに飛んできたファウルに対しても自ら素早く動いて拾いに行くなど、プレー以外の献身的な面も目立った。
ファーストの守りでは前述したようにゴロを1つ処理し損ねたものの、その後は味方の中途半端なバウンドになった送球に対してもしっかりと対応しており、グラブさばきでも非凡なところを見せた。