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野球クロスロードBACK NUMBER
2試合で被安打3…大阪桐蔭・前田悠伍は、なぜビッグ4で一人勝ちできたのか? 近江の打者が語った“他のピッチャーとの明確な違い”
posted2022/04/05 17:26
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Nanae Suzuki
「2年生ビッグ4」最後のひとりが、甲子園のマウンドに立つ。
堂々たる佇まい。大阪桐蔭の背番号11、前田悠伍が左腕をしならせる。
セカンドを守るキャプテンの星子天真は、2年生の泰然自若としたピッチングに安心し、自分の守備のリズムを作っていた。
「普段は気さくというか、先輩の僕らとも他愛のない会話をするんですけど、マウンドに立つと目の色を変えて相手に立ち向かっていくんで頼もしいというか、後輩とは思えないというか。秋より堂々としてきました」
圧巻の甲子園デビュー「のびのび投げられました」
市和歌山との準々決勝。初回から自己最速の145キロに迫る143キロのストレートで押す。かといって力むことはなく、追い込めば相手バッターを見透かすようにスライダーやチェンジアップで三振を奪い、凡打を築いた。
6回を投げ無失点。被安打1、与四球1、12奪三振。圧巻の甲子園デビューとなった。
「マウンドは非常に投げやすくて、景色もよくて。のびのび投げられました」
前田がそう話すように、初めての舞台でも緊張感を抱くことなく役割を果たしたことについて、監督の西谷浩一も2年生の成長に頷く。
「甲子園は初めてでしたけど、バッターを見ながらしっかり投げていましたし、堂々としていたと思います」
前田は花巻東の佐々木麟太郎、広陵の真鍋慧、九州国際大付の佐倉侠史朗と並ぶ「2年生ビッグ4」で唯一のピッチャーであり、その能力、パフォーマンスは、昨秋の時点で全国でも太鼓判を押されていた。
昨秋の全国制覇時は“天然素材”だった
1年生ながら主戦として近畿大会優勝に貢献した前田は、各地区の王者が集まる明治神宮大会でも度肝を抜いた。初戦の敦賀気比戦で6回無失点、10奪三振の快投を皮切りに全3試合に登板。15回で17奪三振、防御率1.80で大阪桐蔭の初優勝に助力した。
この時点での前田は、言うなれば「天然素材」だった。西谷の言葉を思い出す。
「まだ1年生なので、細かいことは言っていません。のびのびと自分の力を出してくれたらいいと思っていますんで。秋の大会やこの神宮の舞台でいい勉強をしてくれたら」
監督から「のびのび」と言われ続けていた前田も、自分を律していた。